世界初!再生医療で「薄毛」治す新療法が始動 薄毛に悩む潜在患者1800万人に朗報
国内のヘアケア市場は4500億円にのぼり、このうち3割程度はかつらや植毛の市場とみられる。外用剤や内服薬では効果がなかなか目に見えないうえ、中断すると効果は消えてしまう。このため、自毛や人工毛を植毛する外科的な施術や、かつらや自毛に人工毛を結着する増毛などにも一定の需要がある。だが、外科治療にあたる植毛は保険診療ではなく、自由診療で行われているのが現状だ。
自由診療は治療費が高額になりがちなうえ、再生医療と銘打った不適切な治療が行われている例も少なくない。この点を問題視した日本皮膚科学会は、2017年に改定した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」のなかで未承認の毛髪再生医療の社会的問題にも触れているほどだ。科学的なエビデンスに基づく治療法が、薄毛治療にも強く望まれるようになっているのだ。
1平方センチメートルの頭皮から大量の原基を作る
日本皮膚科学会のガイドラインで自毛植毛は推奨されているが、他の治療効果がなかった場合にのみという限定付き(人工毛の植毛は推奨されていない)。自毛植毛は全体の毛量が増えるわけではないし、後頭部に幅1センチ長さ10センチにわたって毛包のない(毛の生えてこない)部分ができてしまう。その点、今回の原基移植なら、培養で毛包のタネを大量に作れるので、採取する頭皮は1センチメートル角と、自毛植毛の10分の1程度で済む。
とはいえ、毛包器官原基を人工的に生成する工程はなかなか複雑だ。毛髪を形成するための2つの幹細胞と、髪の色を決定するメラニン色素を作る幹細胞をそれぞれ培養し、辻チームリーダーが開発した「器官原基法」を使って、ナイロン糸を軸に培養細胞群を組み立てる。
これを頭皮に移植(植毛)すると、ナイロン糸は毛包の成長に従って脱落し、ナイロン糸によって形成された新たな毛穴から新しい毛が生えてくる。器官原基が成熟し周囲の組織と連携して再生毛包として定着するのに2~4か月。その後、6か月ほどで他の毛髪と遜色ないしっかりした太さに育つ。移植そのものは既存の植毛技術ででき、特殊な技術は必要ない。
移植した毛は元の毛の性質を維持する。つまり、後頭部から採った柔らかい毛が頭頂部に生えてくることになる。毛周期も踏襲するため、移植前に頭頂部で起こっていた毛周期サイクルの変化の影響を受けない。たとえば、もともと体毛がないヌードマウスには毛穴もないが、背中にヒゲの再生毛包原基を移植するとヒゲが生えてくる。下の動画は、やはりヌードマウスに他のマウスの培養毛包を移植したものだ。
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