iPhoneに埋め込まれる「Facebook対策」の衝撃 「邪悪」と戦うアップルのメッセージとは?

拡大
縮小
(3)本命「Memoji」はARをコミュニケーションの共通体験へ

アップルは昨年のWWDCで拡張現実を用いたアプリ開発環境を整え、「世界最大のARプラットフォーム」にするとアピールした。対応するデバイスの幅の広さと、無償でAR開発キットが利用できる点から、そうしたアピールは間違っていない。

今回のWWDC 2018では、ARKit 2を披露し、より正確な顔のトラッキング(視線と舌の認識を追加)、複数人で空間を共有する機能、空間の保存と呼び出し、3D物体の認識とその解析ツールの提供など、さまざまな機能強化を行った。

「自分の表情」を反映させることができる

iPhoneのiMessageとFaceTimeで利用できるアバター、「Memoji」がiOS 12で搭載される(筆者撮影)

同時に、アップル自身もAR機能を自社アプリに取り入れている。特に、コミュニケーションへの活用で、その核となるのが「Memoji」だ。

絵文字風のアバターを作り、アニ文字のように自分の顔の表情や動きに合わせてスタンプやビデオを送ることができる機能だ。決してリアルではないが、任天堂のMiitomoのように、かなり自分に似たキャラクターを作ることができる。それは、動物や宇宙人の絵文字をアニメーションさせるよりも、断然楽しい体験だった。

加えて、ビデオ通話のFaceTimeでは、リアルタイムで顔を認識してMemojiを合成し、それに自分の実際の顔の表情を反映させることができるのだ。

iOS 12のARKit 2で強化された顔のリアルタイムトラッキング機能を駆使して、自分の顔にMemojiを合成して写真を撮ったり、FaceTimeでビデオチャットに参加したりすることができる(筆者撮影)

なお今回FaceTimeにはビデオ、音声ともにグループ機能が追加され、最大で32人が参加できるようになった。この新しいグループFaceTime機能はiPhone Xだけでなく、iPad、Macでも利用することができる。

ということは、ARを用いたコミュニケーションは、アップルが提供する共通体験に取り入れられていくことが考えられる。

これまで、iPhoneから端を発した技術や体験は、共通化され、そのほかのデバイスに広まっていった。たとえばSiriは、iPhoneで初めて採用され、その後iPad、Mac、Apple Watch、Apple TVに採用された。指紋認証のTouch IDはiPhoneからiPad、Macに採用されている。

そう考えると、MemojiやFace IDを実現するiPhone XのTrueDepthカメラは、iPad、Macへと広がっていくことは想像に容易だ。TrueDepthカメラ搭載モデルの展開が、秋になるのか、それ以降になるのか、引き続き期待していこう。

松村 太郎 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT