人類学者、進化生物学者として高名な英オックスフォード大学のロビン・ダンバー教授は、高校から大学に進んだ学生を追跡調査し、「女性は、電話で話すことなどを通じて長距離の友情関係を維持することができるが、男性は一緒に何かをすることがなければ、関係を継続することが難しい」と結論づけた。
「男性にとって、おしゃべりは何の役にも立たず、サッカーを一緒にする、見る、一緒にお酒を飲む、といった共通体験がないと、関係を維持できない」と分析する。
ダンバー教授の言葉を借りれば、「(男性の友人関係は)去る者は日々に疎し」。男性は関係を維持するために、物理的に時間を一緒に過ごし、何らかのきっかけやアクティビティが必要なこともあり、つながりを作るためのハードルが高い。
「男性の甘え」とは?
アメリカの心理学者トーマス・ジョイナーは著書『Lonely at the top』(頂上で孤独)で、男性がなぜ、孤独になっていくのかを詳細に分析しているが、その中で、「男性の甘え」について言及している。
男性は成功と権力を追求する過程で、友人や家族を当たり前の存在とみなす傾向があるとし、男性は、女性に比べ関係性を構築する努力を怠っている、と指摘する。男の子同士の交流は、たとえば、スポーツや興味がある「モノ」を通じて成立しているため、それほど、「人」に対する気遣いをする必要がなく、関係維持に対してもあまり熱意を注ぐことがない。
一方、女性は小さい頃から、複雑な人間関係を読み解き、お互いの表情や感情を気遣いながら、「共感関係」を構築し、維持する訓練をされ、努力をしている。結果的に、男女の間で、対人関係の構築力に大きな差が出てしまう、というのだ。
先述の第一生命経済研究所の研究では、配偶者との死別後、「異性のパートナーや友人が欲しい」と答えた男性は71.8%に上ったが、女性は45.0%。女性の実に55.0%は、「男性のパートナーも友人も欲しいと思わない」と答えている。「女友達がいればそれで十分、男性の面倒を見るのはもうこりごり」。それが高齢女性の本音かもしれない。
「夫婦仲良きことは美しきかな」。しかし、「愛妻家」の陰に「妻依存」のリスクが隠れていていることに気づき、家族以外の「つながり」を意識的に作る心構えも必要ということだろう。
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