グローバリゼーションの本質は、多様性である。その多様性をつなぐコミュニケーションツールが英語なのだ。この20年で、ビジネスで英語を使う非ネイティブの数が急増した。だから、求められる英語力のレベルはどんどん下がっている。
30年前、英語を話す大多数はネイティブだった。だから日本人もネイティブ並みの英語力が求められ、私もネイティブレベルの高い英語力を目指して勉強した。
しかし、現在は、仕事で英語を話す人の大多数は非ネイティブだ。今、必要なのは、ネイティブだけに受ける気の利いた言い回しではなく、非ネイティブでも理解できるわかりやすい英語だ。英語ができる側ができない側に合わせる必要が出てきたのだ。
ネイティブスピーカーも悩んでいる
英語ネイティブにもジレンマがある。ネリエール氏がいみじくも「ハンディキャップ」と呼んだように、どんな言い方をすれば非ネイティブにも理解しやすいのか、ネイティブにはわかりにくいのだ。
ネイティブにとっては、自分たちが普段、当たり前のように使っている言い回しが通じるか、通じないかをいちいち考えなければいけないので効率が悪い。だが、その確認を怠って、後で伝わっていなかったことがわかると、自分の責任になりかねない。
英語の上級レベルで必要な単語数は5000語、ネイティブレベルでは1万5000語と言われている。これだけの数を習得するには長い年月が必要だ。一方、グロービッシュで必要な単語数は1500語。非ネイティブにとっては英語習得のハードルが下がってありがたいが、ネイティブにとっては使える単語の数が極端に限られるため、言い回しを工夫しなければいけない。もしかしたら、非ネイティブのほうが、コミュニケーション上、有利なのかもしれないのだ。
最近、電話会議などで感じるのは、ネイティブたちがわかりやすい英語を話し、かつ参加者が理解したかどうかを、念入りにチェックするようになったということだ。これは25年前には考えられなかったことだ。
ネイティブたちも、「相手は自分の話す英語を理解できないかもしれない」ということを理解し始めている。通じなくて困るのは彼らなのだ。グローバル化が進み、米国人も英語に対する考え方を変えざるをえなくなってきた。
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