疲れやすい人は「呼吸」の重みをわかってない そのカギはお腹周りにある

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「腹圧」の重要性を最初に唱えたのは、チェコにあるプラグスクールと呼ばれる機関で、20世紀にリハビリの重要性を唱えた神経学者や医師が創設した、伝統あるスポーツ医学専門機関。

「腹圧」はチェコの理学療法士パベル・コラー博士が提唱する「DNS(動的神経筋安定化)」という“筋肉より神経に着目した身体機能理論”の中でもっとも重視されているものになります。

なぜなら、人はみな、赤ん坊のときに「お腹の圧力を保ったまま呼吸」していたから。

乳児期、腹圧呼吸をすることで体は徐々に安定しはじめ、首が据わり、寝返りが打てるようになります。そして、やがて赤ちゃんは立てるように。

これこそまさに、「体の中心が安定し、スムーズに中枢神経と体の各部が連携する、万人に共通する最適で効率のいい体の使い方」にほかならない、というわけです。

「回復しやすい体」に目に見えて変わる

私たちは、疲労やケガ防止のために「腹圧呼吸」を単体で練習させているだけではありません。

スポーツ医局で選手に行うメンテナンスは多岐にわたります。「ちょっと腰が張っている」という選手と「試合中に激しく転倒して負傷した」という選手では当然アプローチが異なりますし、競技や男女によっても筋肉量など、体のつくりが異なるためです。

しかし、そんな競技や男女の壁を越えて用いているのが「腹圧呼吸」。
ちょっと疲れているという選手も、ケガでリハビリ中の選手も、必ず腹圧呼吸を行いながらメンテナンスします。

こりをほぐして疲れを取る場合も、ケガで縮んだ筋肉をゆっくり伸ばすときにも、“対症療法”と“腹圧呼吸”を併用すると効果が増大するためです。

それほど「腹圧」は、ダメージの“予防”と“回復”に重要ということです。

「1万2000メートル泳いでも疲れにくくなった」

腹圧呼吸をスタンフォードのケガと疲労の予防に取り入れてから、「疲れない体に様変わりした」選手たちの声が続々と上がりはじめました。

『スタンフォード式 疲れない体』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

1日8000~1万2000メートル泳ぐ長距離の水泳選手からは、「前と比べて、翌日に疲れが残りにくくなった」「体が安定して、腕がよく回るようになった」という報告が。

また、「疲れても、その感覚が続かなくなった」「前よりも体の反応が良くなって、成績が上がった!」という声も多く聞かれます。

野球部のあるピッチャーは、高校時代から腰に痛みを抱えていて、後に疲労骨折していたことが判明するのですが、リハビリの中に腹圧呼吸を取り入れると痛みの再発がなくなり、メジャーリーグのスカウトが視察にくるほどの投球ができるようになりました。

また、水泳部の腰痛件数も1年間で「7分の1」に減るなど、めざましい効果を上げていて、体が回復モードに切り替わるうえで、いかに「腹圧」が重要かを物語っています。

山田 知生 スタンフォード大学スポーツ医局アソシエイトディレクター

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やまだ ともお / Tomoo Yamada

1966年、東京都出身。24歳までプロスキーヤーとして活動した後、26歳でアメリカ・ブリッジウォーター州立大学に留学し、アスレチックトレーニングを学ぶ。同大学卒業後、サンノゼ州立大学大学院でスポーツ医学とスポーツマネジメントの修士号を取得。2000年サンタクララ大学にてアスレチックトレーナーとしてのキャリアをスタートさせ、2002年秋にスタンフォード大学のアスレチックトレーナーに就任する。スタンフォード大学スポーツ医局にて15年以上の臨床経験を持ち、同大学のアスレチックトレーナーとして最も長く在籍している。

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