「パーティーが終わるまで、ずっと口説かれていました。『私は40歳だよ。中年だよ』と5回ぐらい言ったのですが、彼には関係ないみたいです。マッチングシートのいちばん上に自分の番号を書いてくれ、と頼まれました。カップルになると、全員の前で発表されて記念品をもらえます。記念品目当てで一時的にカップルになる人たちもいるのですが、彼は私の手をつなぎ『一目惚れです!』と公言しました」
雄介さん、なんとも積極的な男性である。綾乃さんは戸惑いながらも彼を受け入れた。
どちらも親に恵まれていない
「この青年の気が済むまで付き合おう。でも、2年ぐらいしたらリリースしてあげよう」
そんな気持ちだったと綾乃さんは明かす。だが、雄介さんは本気だった。なんと2度目のデートでプロポーズ。綾乃さんはとりあえず承諾をしたものの「ないでしょ」と思った。雄介さんはその気かもしれないが、両親やきょうだいが許すはずがない。自分が親だったら大反対するだろう。
ここで2人には奇妙な共通点があることがわかる。どちらも親に恵まれていないのだ。雄介さんの母親は2年前に50代前半にして亡くなっており、昨年に他界した父親と雄介さんはずっと不仲。一人っ子の雄介さんは天涯孤独に近い身の上だったのだ。
親問題は生じないとわかっても、2人の間には別の課題があった。どこに住むのか、おカネはどうするのか、だ。
独身のまま長く暮らすことも想定していた綾乃さんは、首都圏に独り暮らし用のマンションを買ったばかりだった。とても気に入っているが、こだわりの洋服なども多く、2人で暮らす広さはない。
会社の独身寮で暮らす雄介さんは、学生時代の奨学金と自家用車のローンを返済中。資金繰りにはまったく余裕がない。2人で暮らすためには、綾乃さんがマンションを売り、貯金を崩さなければならない。
「せめて車のローンを終えるか、それとも海外赴任にでもならなければ結婚はしないよ、と伝えました」
すると、不思議なことに状況が結婚に向けて動き始めた。すでに疎遠になっていた綾乃さんの母親が他界し、雄介さんは本当に海外赴任が決まった。なお、雄介さんが勤める企業では若いうちに海外経験をさせることが多いのでレアケースではない。赴任手当も出るため、帰国する頃には奨学金と車のローンは終わり、綾乃さんとの2人暮らしを始める程度の貯金はできているはずだ。
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