前回の本欄「北朝鮮がヘソを曲げた原因はジュリアーニ?」で示したように、ミュラー特別検察官には、「ミュラー氏自身が2009年にロシア政府の中枢に負った大きな借り」という、いわば「特別検察官の職との巨大な利害対立」がある。金正恩氏は、その意味を法的に正しく理解しておくべきだ。
ミュラー氏が、今後、従来のような強引な手段に固執すれば、その手法について、議会や裁判所が検証する機会がより増えることになる。ミュラー氏がいつも避けようとしている、米国憲法下の「デュー・プロセス(適正手続き)」という神聖なる法の要請には逆らえないからだ。つまり、議会や裁判という場で、遅かれ早かれ、具体的な「ミュラー氏の持つ利害対立」の中身が、検証されることにつながり、厳しく吟味されることになる。
それに、ここへきてミュラー氏の捜査は「政治的な動機に基づく」とみなす世論の割合が過半数を超えてきている。それは、今後、議会や裁判の場でミュラー氏に不利に働くことは間違いない。現に、ワシントンDC連邦地裁のT.S.エリス判事は、つい最近、ミュラー氏の虚偽の手法に関して、法廷で厳しく糾弾している。
「偽証のわな」
現在、ミュラー氏はトランプ大統領を強制証言させるための召喚状を送る戦略を立てている、と米メディアはかまびすしい。これに対して、トランプ大統領の個人弁護団の一人であるルドルフ・ジュリアーニ弁護士は、ミュラー氏と裁判で争うとまくし立てている。それがまた騒ぎを大きくしている。
何の証拠も持たないミュラー氏が、トランプ大統領を聴取しようと狙っているのは、「偽証のわな」だから、大統領は、これを受けるべきではない、と多くの法律家がメディアを通じて明言している。「偽証のわな」という法律用語は、証拠も嫌疑もない人物を、宣誓付きの証人として検察官が聴取し、そのおしゃべりの中から、偽証を創り出すという、いわば「おとり捜査」の1つと定義される。
しかし、現在、民間のライバル企業同士が行う「おとり捜査」は、ずっと以前から違法となり、それを仕掛けることは、米国法の下では、とっくにできなくなっている。今回、ミュラー氏がやろうとしている捜査は、民間企業同士で行う「ライバルおとり捜査」よりも、ずっと悪質な「偽証のわな」という名の政治的な捜査であり、憲法違反を構成する違法というべきである。ましてや、行政府の一部である特別検察官が、行政権そのものである大統領に「わな」を仕掛けるとは、まさに言語道断だ。
トランプ大統領とミュラー特別検察官の立場はいまや完全に逆転している。その点について、金正恩氏が誤解せずに、正しい認識へと、ご自身の気持ちのボトムライン(底線)を切り替える必要がある。天才ネゴシエーターとして、相手の心を読むトランプ大統領を激怒させてしまっては、北朝鮮にとって、元も子もなくすことになるからだ。
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