6月12日、シンガポールのセントーサ島のカペラホテルで行われた米朝首脳会談は、劇的シーンで始まった。日本時間の同日午前10時(現地時間9時)、ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の2人が初対面で歩み寄り、目と目を合わせ、握手を交わした。
その場面をリアルタイムでつぶさに見た筆者の印象は、金正恩氏のこれまでメディアで見せたことがないほどに緊張した表情だった。「最初の1分間で、すべてがわかる」と言っていたトランプ大統領の視座には、金正恩氏のトランプ大統領へのホンネが、瞬時に、鮮明に読み取れたはずだ。
拉致被害者の帰還についても「複数回」触れた
残念ながら、両首脳の1対1の会談は、通訳を含めて40分弱と伝えられる。通訳を考えると正味の会談時間はわずか20分だろう。したがって、トランプ大統領が会談後の単独記者会見で語っていたように、今後、何度かにわたる首脳会談の継続が必要になるだろう。
過去20数年間、米国の歴代大統領は、北朝鮮問題について、何も実行できなかった。そのことに鑑みれば、今回、トランプ大統領の実行力は遺憾なく発揮され、その記録はアメリカ大統領史に刻み込まれることになる。こうした見方をしていいのではないだろうか。
言い換えれば、わずか40分弱という驚くほど短い1対1のトップ会談で、これまで歴代の米大統領ができなかった「平和への道」を、トランプ大統領は持ち前のネゴシエーション技術によって、一気に、こじ開けたということができる。
日本人拉致被害者の帰還についても、その短時間の中で触れた可能性は高い。なぜなら、トランプ大統領は拉致問題について、「複数回、持ち出した」と、マイク・ポンペオ国務長官が記者会見で述べているからだ。この「複数回」という表現は、ポンペオ国務長官が同席した、米朝首脳会談の時の発言だけではないことを意味している。
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