トランプは拉致問題の完全解決を狙っている 金正恩へのメッセージは「贖罪せよ」だ

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米国という宗教社会の中に実在する「生きた常識」を、金正恩氏はどこまで理解しているだろうか(写真:Leah Millis/REUTERS)

6月1日、ドナルド・トランプ米大統領は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の右腕とされる金栄哲副委員長とホワイトハウスで会談した。

その直後のトランプ大統領の記者会見の様子をリアルタイムでつぶさに見ていた筆者が注目したのは、シンガポールでの米朝首脳会談は、1回とは限らず、2回以上となる可能性があり、少なくとも数回以上の会談の継続は、当然という認識を示したことだ。

日本人拉致問題の解決にも強い意志

トランプ大統領の現実認識として、米朝双方やほかの多くの関係国には、長年、感情的な対立のしこりがあり、一朝一夕には解決しにくい。歴代の米政権もこれまでまったく解決できずにきたのだから、会談が数回以上になって当然であり、そのこと自体、トランプ大統領が本気で解決する意欲を示すものということもできる。

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一連の米朝会談が、大いなる成功へとつながった場合、北朝鮮に対する経済制裁の解除の可能性についての言及もあったが、記者団から米国の経済支援の規模について問われると、米国にとって必要とされる支出額は、それほど巨大にはならないと述べた。

そして、トランプ大統領は記者団に向かって、何度もこう繰り返した。韓国も経済支援をするし、日本もする。さらに、中国も経済支援をする意欲が大いにある、と。支援国について、韓国、日本、中国という順に、3カ国の名を何度も挙げたのが印象的だった。

日本で関心の高い拉致問題を含む人権問題について、米朝首脳会談で話し合われる可能性があるかどうか問われると、「プロバブリ(たぶん)」と応えていた。米国社会の一般常識として、その表現の意味するところは、確率8割以上ということになる。

金栄哲副委員長との会談で拉致問題を取り上げなかったのは、金栄哲副委員長からも、また金正恩委員長が託した親書にも、人権問題についての言及がなかったからだろう。ところが、日本の経済援助については、韓国、中国と並んで積極的にするという将来予測をトランプ大統領が示したことは、日本の拉致問題解決に関して、トランプ大統領が強い意志を持っている証拠だと見ていい。

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