スーパーショットの陰に日頃の努力 全米シニア勝利の井戸木プロだけじゃない

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2020年の東京オリンピック開催が決まりましたね。私は前回の1964年の東京オリンピックの年に、22歳でプロテストに合格。自分じゃ、オリンピックとともにゴルフの競技生活が始まったと人に言ってるんです。

先日「それじゃ、次回の東京オリンピックまで選手生活を続けたらどうだ」、そう言われて一瞬、それもいいなと思ったけど、次回のオリンピックの頃は80に手の届く歳になっている。でもね、競技の選手ではないかもしれないけど、ゴルフへの情熱は変わらないし、それに伴ったトレーニングも続けていると思う。

昔というか、東京オリンピックの頃は今のようにプロゴルフトーナメントは、それほど多くなく、数少ない試合に出るためには、当時はプロにも月例ってのがあって、それの上位に入らないと試合に出られなくてね。周りはオリンピック、オリンピックと騒いでいたけど、不器用な自分は頭の中は月例のことばかり。マラソンでアベベという選手が勝ったという記憶ぐらいで、競技について記憶がないですよね。

自分では一生懸命やっていたつもりでも、初優勝はその7年後の、71年の関東プロゴルフ選手権。いくら頑張っても、すぐ結果が出るわけでもないのがゴルフ、いや、ほかのスポーツも世の中もそうかもしれない。でも、努力をしないと何も生まれないのは確かだね。

今年、シニアツアーでは井戸木鴻樹が全米シニアプロで勝ちました。世界のメジャー大会ですから立派なもの。井戸木はショットが正確でアプローチがうまい、レギュラーツアー時代は新潟オープンに勝った、そんな印象があるくらいですが。その井戸木がコツコツ練習を積み重ね、その努力が全米チャンピオンに結び付くんだから、これがスポーツのすばらしさ。

シニア選手だと加瀬秀樹や羽川豊が、今やテレビの解説で名前を知られていますが、だからといって時間があると家でのんびりしているわけじゃありません。すぐ、トレーニングウエアに着替えて、走ったり体を鍛えたりしてるんですよ。それでなけりゃ、羽川がファンケルクラシックで最終日に62を出して逆転優勝なんてありえないね。最後の9ホールで八つのバーディーだって、日頃の努力がないと出せるスコアじゃありません。そんなすばらしいゴルフを見てファンの方は喜んでくれますが、きっと陰の努力を肌で感じている人も多いんでしょうな。

ゴルフやいろんなスポーツに感動して、7年後には選手でオリンピックに出てみたい。そんな夢を持つ子供も多いはず。どうしたらオリンピックに出られるか、ゴルフ担当者はその道順をわかりやすく皆に知らせてほしいものです。ゴルフがもっともっと皆に身近になって、その中から感動を与える名選手も生まれるはず、と思うね。

青木 功 プロゴルファー

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あおき いさお

1942年千葉県生まれ。64年にプロテスト合格。以来、世界4大ツアー(日米欧豪)で優勝するなど、通算85勝。国内賞金王5回。2004年日本人男性初の世界ゴルフ殿堂入り。07、08年と2年連続エージシュートを達成。現在も海外シニアツアーに参加。08年紫綬褒章受章。

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