二つの山を越え、練達したシニアのゴルフ パワー、勢いのあるレギュラーもいいけれど

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ゴルフトーナメントでは、50歳になるとシニア入りする。ふと、50歳でシニアという言葉の響きに抵抗があった。米国で、だいぶ前にシニアツアーという言葉からチャンピオンズツアーに変えたのも、僕と同じ気持ちを抱いたからだろう。

シニアという響きには、経験豊かな、上級者という意味合いと、古老、老人、お年寄りという意味合いが同居している。それが50歳という年齢からではイメージが悪いという理由で、チャンピオンズツアーにしたと聞いている。

確かに、チャンピオンズツアーの今季のデータを見ると、平均飛距離の1位がフレッド・カプルスで298.1ヤード。ロンゲスト・ドライブでもカプルスが360ヤード。300ヤードを超える選手がずらりと並んでいる。こうなるとシニアのイメージが一転する。道具とボール、身体能力の進化で、今やシニアは飛ばないという先入観すら消える。

僕は、シニア選手は、ゴルフの二つの山を登ってきてる選手だと思っている。一つはスイングの山である。若い選手は、真っ先にこのスイングの山を登る。きれいで確実な再現性のあるスイングを身に付けて、ショットを精緻にしようという山である。つまりショットがよければ、当然スコアに反映されて勝利に近づける。だからスイングを徹底的によくしていくという道のりだ。

時として、スイングオタクに陥って、ゲーム中のほんの少しのショットミスで落胆し、自滅してしまう選手がいる。それが年齢とともに青木功の名言「ゴルフはミスのゲーム」「耳と耳の間でするゲーム」という智慧が身に付く。それがゲームの山である。シニア選手のスイングは個性があるし、ミスショットのつなぎ方がうまい。1打1打をどう紡いでいくか、ゲームの山を心得ている。

全米プロシニアに優勝した井戸木鴻樹は、シニア入りして大きく変わったのは「まずパッティングするときの気持ちです」と言った。

「レギュラー時代は、入れなアカン、という気持ちが強くてそれがプレッシャーになっていたんですね。でも、シニアになって、パターはそのときの都合って思えるようになったんです」。つまり山あり谷ありの人生によって、予期せぬ出来事に対してショックの吸収能力が働くのだ。その心の作用がシニア選手のゲームを面白くしてくれる。

今年の日本アマチュア選手権に優勝した大堀裕次郎君(大阪学院大学4年)は、昨年日本プロシニアで湯原信光のキャディーをした。そのときに「シニアの選手の人たちは、ミスしても、それを引きずる選手は、一人もいないんです。確かに、ミスした瞬間は怒るんですけど、次の瞬間に切り替わっているんですね。ゲーム中のオンとオフの使い分けが上手で、自分に足りないものが、いろいろ見えたんです」と語った。

パワー、勢いのあるレギュラーもいいけれど、練達したゴルフのシニアツアーも面白い。

三田村 昌鳳 ゴルフジャーナリスト

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みたむら しょうほう

1949年生まれ。大学卒業後、『週刊アサヒゴルフ』副編集長を経て、77年にスポーツ編集プロダクション(株)S&Aプランニングを設立。日本ゴルフ協会(JGA)オフィシャルライター、日本プロゴルフ協会(JPGA)理事。逗子・法勝寺の住職も務める。

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