星野氏が「ビジネス客を忘れる」と語る理由 新ブランド「OMO」は従来とは違う立地で戦う
その最たるものが、「ご近所専隊 OMOレンジャー」だ。
日頃ホテルで働くスタッフがホテル周辺の飲食店や小売店、観光スポットなどを探し出し、OMOレンジャーとして、宿泊客をガイドするもの。
宿泊客は1人当たり、1000円を払い(飲食費は別)、OMOレンジャーに、周辺のディープなスポットを案内してもらうことができる。宿泊者の満足度を高める戦略に打って出る。
そのほかにも旅行計画を立てられるよう、ロビーにはソファーを多く設置し、ホテルから500歩、10分圏内の魅力的な施設を記した「ご近所マップ」を掲げるなど開放的な作りにした。
ホテルがOMOレンジャーを使って、宿泊者を積極的に周辺の飲食店に送客するようにしたことで、ホテル内のレストランの位置づけも変える。これまでは主に宿泊者を対象にしていたが、「街中の飲食店の営業が終わって、帰ってきた宿泊者に対し、シームレスに食事やアルコール類を提供できる」(星野氏)という方針だ。
同じOMOでも大塚と旭川で内容は違う
2つのホテルが同時に開業したOMOブランドだが、その中味は異なる部分もある。OMO5と名付けられた大塚は、山手線の大塚駅から徒歩数分の好立地にある。地元の不動産業者、山口不動産が施設を建て、星野リゾートが運営を受託する形式だ。1泊当たりの客室単価は約1.5万円(朝食除く)。
レストラン・カフェは3か所あるが、宴会場などは持たない。いわゆる宿泊特化型に近い作りだ。「東京のマーケットは世界有数の規模。心配はしていない」(星野氏)。
一方のOMO7と名付けられた旭川はかつて、「旭川グランドホテル」という名前で運営していた。宿泊だけでなく、高級レストランや宴会場をそなえ、地元の大掛かりな会議や結婚式もできる、地元民なら知らぬ人がいないシティホテルだ。
業界用語では地方都市にあり、その都市名を冠した「〇〇グランドホテル」というホテルを、「地方のグランドホテル」と呼んだりする。そこにはやや皮肉的なニュアンスも含まれている。地方の衰退を象徴するからだ。
こうした「地方のグランドホテル」は、後発のビジネスホテルに宿泊部門を、街中の飲食店にレストランを、ハウスウエディングなどの専門業者に結婚式を、それぞれシェアを奪われている。かつて活発だった法人の宴会も、「1990年代前半に比べれば単価は半分以下に落ちた」(東京都内のシティホテル関係者)。
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