「快感」とはいったい何か?米国で議論が沸騰

芸術がもたらす快楽はほかと異なるのか

ブルームの考えでは「芸術はあらゆる種類の欲求を満たす」。テレビドラマを見るときも縦列駐車をするときも脳は働くが、だからといってこの2つの行為が同じであることにはならないと彼は言う。

クリステンセンは神経科学の研究者になる前はダンスを学んでいた。単一の報酬系がすべての快感や快楽を処理している点に異議を唱えるつもりはないが、だからといって「記憶の過程や自意識や推論と関係する別の神経系」を芸術が活性化させ、「快感にさらに何かが付け加えられる」可能性が排除されるわけではないと彼女は言う。

食べ物や芸術からオーガズムは得られないのか

この「高レベルの快感」についてはまだわかっていないことが多い。とはいえ、人間は死ぬまでずっと快感を追求し続けている生き物だ。だから「満たされることのない渇望」や、健康上の問題を引き起こさないばかりか、「ものごとをそれまでと違う角度から考えたり経験したり」できるようにしてくれる数少ないものの1つについて、理解を深めようとして何が悪いだろうと彼女は考える。

そうなると、こんな問いが頭をよぎった人もいるのではないだろうか。もしどの快感も似たようなものなら、食べ物や芸術からオーガズムを得られないのはなぜなのか――?

実はまったく得られないわけではない。インディアナ大学ブルーミントン校公衆衛生大学院の「性の健康推進センター」所長を務めるデブラ・ハーベニックによれば、完熟トマトを食べたり、性的要素のない散文を読むことがオーガズムにつながった例があるという。裸足で木の床の上を歩いたり懸垂をしていて……というケースもあったらしい。

どうしてそうなるのかはハーベニックにもわからない。要するに「快感や快楽については、科学者もわかっていないことがたくさんある」ということだ。

(執筆:Heather Murphy記者、BRAD PLUMER記者、
翻訳:村井裕美)
©2018 New York Times News Service

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