原油「1バレル=100ドル時代」再来の「予感」 2020年に向けヘッジファンドのシナリオ通り
一方で、現物業者の売りも多い。現物業者の売り持ちの枚数も過去最高水準である。もし原油価格が上昇した場合、売り方である現物業者は損失覚悟で買い戻すか、現物をデリバリーして売り持ちを解消するしかない。通常は、価格が上昇する過程で売り持ちを増やしていくことになるため、現物では評価益が出る一方で、先物では評価損が大きくなる。
この場合、現物に関しては「評価益」なので、すぐに現金が入ってくるわけでない。一方で、先物は毎日「値洗い」され、ポジションを維持するのに必要な証拠金が足りなければ、結局資金を投入するか、先物を損切るしかない。
価格が高くなると、このようなことが実際に起きることで、相場がさらに吹き上がることがたまに起きる。そうなると、現物のフェアバリューを無視して価格が上昇するようなことも起き得るわけである。
ヘッジファンドが収益を上げやすいシナリオに?
もし、いまの原油相場の水準をさらに超えていくと、かなり高い確率でこうしたことが起きそうだ。70ドルを超えると、相場上昇に勢いがつく可能性があると筆者が見るのは、そのような理由が背景にある。そもそも、未決済の建玉全体の量は、リーマンショック後の水準の約2.5倍に拡大している。市場規模の拡大には、低金利による過剰流動性もあるのだろうが、いずれにしても、多様な投資家が市場に戻りつつあり、現在の原油相場の活況につながっている面はあるだろう。
いまの原油相場は、上記のような先物市場におけるポジション需給だけで動くような単純なものではく、なお上昇余地が大きいだろう。そもそも、原油相場が反転・上昇に転じた最大の理由は、上記のOPEC加盟・非加盟国による減産を背景とした石油需給の改善だ。
一般的には、シェールオイルの増産で需給は緩和し、原油相場は上昇しないとの見方が多かったことは記憶に新しい。しかし、その見立ては甘かったようだ。世界経済の拡大に伴い、石油需要は増加している。この基本的な点を見落としていたのである。現在のOPECや国際エネルギー機関(IEA)の見通しを前提とすれば2018年後半には世界の石油需給は四半期ベースで供給不足になりそうだ。ならば原油相場は一段高になるはずだ。
その場合、シェールオイルの生産がさらに増えることが想定されるが、すでに開発がかなり進展しており、今後大幅な産油量の拡大余地がありそうなのはほとんどない。つまり過去のような増産ペースは維持できないところにまで来ている。そのため、原油需給は市場が想定しているほど緩和しない見通しである。
加えて、サウジアラビアが2019年以降のOPEC非加盟国との産油量の調整に関する新たな枠組みの構築を模索している。これは長期的な視点から原油価格を一定水準で維持させるための方策である。こうした動きが出始めていることは、原油相場の下支え要因になる。現状の需給面に加え、こうした政治的な動きを過小評価しないことが大切だ。また直近もイランに対する米国の動きも無視できない。
きな臭い動きが中東情勢の不安定化を想起させ、これが原油相場を支えるといった構図は、ヘッジファンドが収益を上げるために利用する最も典型的なストーリーだ。2018年内に80ドル、さらに2020年に向けて100ドルの大台も視野に入る可能性を念頭に入れておきたいところである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら