原油「1バレル=100ドル時代」再来の「予感」 2020年に向けヘッジファンドのシナリオ通り

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その過程で、WTI原油先物は66.66ドルまで上昇した。当時は、投機筋が明らかに買い過ぎているように見えたこともあり、「投機筋が歴史的な水準にまで買い上げているため、いずれ暴落する」との見方が市場で蔓延した。また時を同じくして、1月の米雇用統計をきっかけに株価が大きく崩れ、原油相場もつれ安、58ドル割れ目前まで下げた。しかし、その後は着実に下値を切り上げ、株価が戻りきらない中でも、原油はジリ高トレンドを維持している。

どうして大半の人は原油価格が頭打ちになると考えたのだろうか。これは原油相場を「先物ポジションの需給」だけで説明したからではないか。彼らは先物市場での買われすぎを指摘し、株価の低迷もあって原油相場の下落をしてきしてきた。しかし、実際には先物価格は彼らの見込みとは裏腹に上がり続け、2014年以来の水準にまで戻している。

先物市場で投機筋のネットポジション、つまり買い持ちから売り持ちを差し引いたネットのポジションの量の水準だけを見ていると、こうした誤った理解になってしまう。原油相場は先物市場におけるポジションといった、表層的な材料で動いているわけではない。現物市場の動向を理解しないと、このような理解不足を背景とした致命的な間違いを犯すため、注意が必要だ。

見えない「買い」に注意が必要

どういうことか。もう少し詳しく説明しよう。先物市場では、米商品先物取引委員会(CFTC)に登録された業者が、取引したポジションの属性背景ごとに報告をしている。投機筋が行った取引は、投機筋として報告するのだが、一方、現物業者の取引は、商業筋として取引される。以前は金融商品を販売した際の金融業者のヘッジ取引も商業筋にカウントしていた時期があったが、いまはそのようなことはないだろう。

ここでいまのNYMEX市場におけるWTI原油先物市場のポジションを見ると、とにかく目立つのが投機筋の買いポジションで、買い越しポジションが過去最高水準に積み上がっている。このように考えると、上記のように「買われすぎ」であることから、「早晩売りが出て、相場は大きく下げる」との見方になっても不思議ではない。

しかし、その一方、実はこれらのポジションの裏には、先物市場を経由しない、証券会社との相対取引となる「ペーパー取引」のヘッジも含まれている。さらに言えば、投機筋が証券会社と仕切ったペーパー取引の中には、証券会社の買いヘッジが市場に出ていない分もある。

つまり、証券会社はリスクを取って、結果としてポジションがショートとなっているケースもある。これらから考えると、市場における実際の買い持ちポジションは、表面に出てきている量よりもかなり大きい可能性があることになる。このように考えると、原油相場が下がらずにむしろ上げやすくなっていることがわかるだろう。

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