エアレース王者、45歳室屋が挑む千葉3連覇 次の千葉大会に向け、カンヌ戦で得た収穫

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4月末に開催されたレッドブル・エアレース第2戦カンヌ大会で自身のフライトを振り返り、千葉大会への展望も語った室屋義秀選手(筆者撮影)

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップの2017年シーズンで、世界王者に初めて輝いた室屋義秀選手。今シーズンの開幕戦(アブダビ)で2位と好発進を決めた室屋は、さらに機体を改良させて第2戦の開催地フランス・カンヌへと乗り込んでいった。

レッドブル・エアレース(以下、エアレース)とは、レース機が設置されたパイロン(エアゲート)の間をぬうように全長約6kmのコースを飛行して、1000分の1秒のタイムを争う世界最高峰の三次元モータースポーツだ。

最高速度は時速370kmに達する。レースは全8戦あり、世界各国を転戦しながら開催される。パイロットには、空軍や旅客機パイロットの出身者、インストラクター、室屋のように曲技飛行のエアロバティックス世界選手権に出場してきた者もいる。アジア出身のマスタークラスのパイロットは室屋だけだ。

世界王者として迎えた2018年シーズン

昨シーズンのエアレースで、アジア人初の世界王者に輝いた室屋は、自分を見失い始めていた。世界王者となってから、ありとあらゆる場で言われてきた言葉がある。

「ディフェンディングチャンピオンとして、2018年シーズンをどのように戦うか?」

当初は耳にしても聞き流していたが、周りからの期待は日に日に高まるばかりで、それに応えようと「自分が2017年王者として、どう戦えばいいのか?」と考えてしまう時間が増えていく一方だった。

このままの精神状態では良くないと考えた室屋は、2010年からメンタル指導を受けている白石豊氏に相談した。白石氏は、日本のスポーツメンタルトレーニングの第一人者で、オリンピックメダリスト、プロ野球選手など数多くのアスリートにメンタルトレーニングを行う日本屈指のメンターだ。

「先生、王者としてどのように戦うべきでしょうか?」と室屋が問うと、白石氏は即答した。

「そんなことを気にしているようでは、連覇はできないよ。勝ち続けるためには守るのではなくて、絶えずチャレンジをして、いかに新しい自分をつくり出すかが大切となるよ。」

室屋はこれまで経験したことがない過剰な期待に踊らされ、「ディフェンディング」という言葉に対する、一種の催眠状態に陥っていたのだ。

白石氏の言葉で自分を取り戻すことができ、2018年シーズンに向けて歩み出したのであった。

「チャンピオンシップを獲得するには、2勝以上挙げて確実にポイントを積み重ねていく必要があります。機体の性能に加えてテクニックのレベルを上げていって、性能を限界まで使わなくても勝てるようにしていきたい」と、シーズンを通して安定したフライトを行いながらの総合優勝を室屋は目標として打ち立てた。

4月22日、第2戦カンヌ大会での室屋義秀選手のフライト(写真:Joerg Mitter / Red Bull Content Pool)
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