電撃解散説は初夏のつむじ風に終わったのか あっという間の収束になお疑心暗鬼も
五月晴れに新緑がまぶしい黄金週間がスタートしたが、国権の最高機関の国会は、与野党攻防の激化で審議が空転状態のまま連休休戦に入っている。「もり・かけ」と「日報」に「セクハラ」という底なしのスキャンダル連鎖で、安倍晋三政権には国民の厳しい批判も集中し、出口の見えない与野党攻防のチキンレースが続く。そうした中で連休前に突然、自民党内からメイストーム(5月の嵐)のような電撃解散説が飛び出して、永田町を騒然とさせた。
たしかに、過去の政治史や政略論からみれば、すべてをリセットできる「危機突破解散」の可能性は否定できない。しかし、今後の政治・外交日程や選挙結果を見据えれば、「正気の沙汰ではない」(自民長老)のも事実。解散権者である首相が「私の頭の中にはまったくない」と否定したことで、この電撃解散説は初夏のつむじ風のように、国会議員の不安を巻き上げて、短時間で消え失せた。ただ「一寸先は闇」が政界の常。永田町には「まだまだ油断はできない」(自民若手)との疑心暗鬼も残っている。
解散風の吹き出し口となったのは森山裕自民党国対委員長の4月25日午前の発言だった。国会で審議拒否を続ける、野党のリーダーの枝野幸男立憲民主党代表が「内閣不信任案提出を検討している」と語ったことに対し、森山氏が「内閣不信任(決議案)が出されれば、(衆議院の)解散も1つの内閣の選択肢」と反応したからだ。自民党の二階俊博、公明党の井上義久両幹事長と森山氏ら与党幹部が空転国会の打開策を協議した後の森山氏の発言だけに、「連休明けにも、電撃解散か」の情報が永田町を駆けめぐり、メディアも色めき立った。
二階氏「あるわけない」、枝野氏「時代遅れだ」
その後、二階氏が「誰がそんなこと言ってるのか。(与党の)幹事長の知らない解散なんか世の中にあるわけない」と真っ向から否定した。しかし、政界では「(二階、森山両氏の)巧みな連係プレーではないか」(民進党幹部)との憶測が広がり、選挙に弱い若手衆院議員らも「まさか、また選挙か」と慌てたが、首相の26日の国会答弁での「全否定」で、騒ぎは一応、収束に向かった。
連休前の与野党攻防の構図をみると、「最大のチャンス」と攻めまくる野党に対し、相次ぐ失態で政府与党は防戦一方だっただけに、森山氏の発言は「野党への脅し」ともみえた。たしかに、「不信任案提出」を口にした立憲民主など野党6党も、民進党、希望の党の両党による新党「国民民主党」結成(7日に結党大会)騒ぎで「選挙どころではない状況」(希望の党若手)だったことは間違いない。枝野氏も「立憲民主党のことだけを考えると、今解散してもらえれば間違いなく議席が増える」としながらも「与党が相当困っていることの表れだが、総理大臣の恣意的(しいてき)な解散は時代遅れだ」 と及び腰が目立つ。
本来、政権が疑惑まみれで危機に陥れば、野党がそろって「解散」を求めるのがこれまでの政界の常識だ。しかも、野党側は昨年10月の衆院選での与党圧勝を「もり・かけ問題などでの、政府の虚偽説明に有権者がだまされた結果」(立憲民主)と非難しているのだから、与党からの解散論を野党が批判するのは「辻褄が合わない」(自民幹部)ともいえる。
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