電撃解散説は初夏のつむじ風に終わったのか あっという間の収束になお疑心暗鬼も
首相は大型連休前の産経新聞のインタビューで、9月の総裁選への対応については「国会閉会後に判断する」と述べた。会期延長がなければ6月20日の国会閉会直後に出馬表明する考えを示唆したものだ。併せて、衆院解散については「まったく考えていない」と改めて否定し、「昨年の衆院選で圧倒的多数の議席をいただいた。当然、選挙で約束したことを実行していくことが私に求められている」と述べ、解散抜きでの3選による政権維持への強い意欲と自信をにじませた。
一方、29日からロシア訪問などの外遊中の二階幹事長も同日、「今は国会審議に専念すべき時だ。この間も解散したばかりではないか」と改めて解散を否定した。さらに二階氏は総裁選についても「3選支持は1ミリも変わっていない。これだけ外交実績を上げている」と首相支持を改めて明言した。
「政局は一瞬で」と会期末まで続く緊迫感
こうして、電撃解散説は吹き出してから数日間で収束した。ただ、野党側は連休明けも徹底抗戦の構えを崩しておらず、与党が一部野党も巻き込んでの強行審議を続ければ、働き方改革法案やカジノ関連法案の会期内成立には、1年前の共謀罪のような国会での強行突破が必要となる。さらに、加計学園問題で2015年4月に官邸を訪れた愛媛県や今治市の担当者に「首相案件」と発言したとされる柳瀬唯夫元首相秘書官の証人喚問や、森友問題での昭恵夫人の国会招致の問題も「首相の悩みの種」として残されている。
時間の経過とともに疑惑追及が下火になっても、国民の疑念を首相自らの説明で払拭しない限り、3選にこぎつけても、火種を抱えたままの政権運営が続く。その場合、来年7月の参院選に衆院選をぶつける衆参同日選の可能性も取り沙汰されるが、両院ダブルでの議席減ともなれば、選挙後に即首相退陣ということも可能性もある。
第2次安倍政権発足以来5年半で、首相の解散権行使は2014年と2017年の2回。政権発足直前の12年衆院選に2回の参院選を加えれば首相は国政選挙5連勝を誇る。今回、外交でも政権浮揚が図れず、総裁3選が困難になった場合、首相が国会閉幕後の不出馬表明か会期末解散かを迫られれば、「解散はサプライズが必要」と繰り返してきた首相が、解散を選択する可能性は小さくない。その一方で首相が日朝首脳会談で拉致問題を解決し、日朝国交正常化交渉が軌道に乗れば、「そのこと自体が解散の大義名分になる」(外務省幹部)との見方もある。
「板子一枚下は地獄」といわれてきた政界では「政局は一瞬で変わる」のがこれまでの歴史だ。疑惑解明に総裁選、そして日本の命運もかかる首脳外交と「政局に直結する重要課題」(自民幹部)が複雑に絡み合い、首相の政権運営も「攻めと守りが交錯している」だけに、永田町では「6月20日の会期末までに何があってもおかしくない」(自民長老)という緊迫感が続くことは間違いなさそうだ。
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