電撃解散説は初夏のつむじ風に終わったのか あっという間の収束になお疑心暗鬼も

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ただ、足元を見られて困惑する野党よりも与党内部に緊張感が走ったのは、「いま、解散に打って出れば、自爆テロにもなりかねない」(公明党幹部)との危機意識があるからだ。「いくら、野党がバラバラでも、ここで解散を仕掛ければ、一気に野党統一候補でまとまってしまう」(自民選対)とみるからだ。財務省が認めて謝罪に追い込まれた前事務次官のセクハラ疑惑でも、首相に近い自民幹部や若手の失言、暴言が集中砲火を浴びていただけに、「自民党内に緊張感を取り戻すため、党内向けの高等戦術」(自民幹部)との見方も広がった。

ただ、伏線はあった。「安倍官邸の黒子」とされる飯島勲内閣官房参与が4月中旬の民放テレビ番組で、「私から見たら(解散は)『1日も早く』で、連休明けの週に解散して6月3日投開票か、6月11日解散で7月8日投開票」などと具体的解散日程にまで言及していたからだ。飯島氏は解散の大義についても「関係ない」と述べており、まさに「火のないところに煙は立たない」という状況ではあった。

「黒い霧」に習っての危機突破にもみえたが

与野党のベテラン議員までが一瞬、浮足立ったのは、佐藤内閣での1966年末のいわゆる「黒い霧解散」を想起したからだろう。戦後政治史で語り継がれる半世紀前の電撃解散劇で、政権をめぐる各種スキャンダルの連鎖という"黒い霧"の中でもがいていた佐藤栄作首相(故人、安倍首相の大叔父)が、「一か八か」の解散断行で窮地を脱し、戦後最長政権につなげたという歴史があったからだ。

今回も、相次ぐ政権内部の不祥事で、9月の自民党総裁選での首相の3選に黄信号が灯り、首相の肝入りの働き方改革法案など重要法案の国会会期内での処理もまったく見通しが立たない状況だけに、首相が「一発逆転」を狙ってもおかしくはない。

にもかかわらず、首相は野党欠席の4月26日午前の衆院予算委集中審議で「(解散は)頭の中にまったくない」と否定した上で「行政の問題で国民の信頼を揺るがす事態に、行政府の長として責任を痛感している。膿(うみ)を出し切る」と、当面は一連の不祥事の真相解明と再発防止に取り組む決意を表明した。

総裁選での首相の対抗馬とされる石破茂元幹事長は「いつでも解散になって構わないように準備しておくのが衆院議員」と述べ、発言が大きな影響力を持つ小泉進次郎自民筆頭副幹事長も「野党が解散を恐れるというのは考えられない」と弱腰野党を揶揄した。しかし、両氏とも今回の電撃解散説については、「国民と官邸のどちらを向いているのか」(石破氏)などと批判的だ。

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