魔物が棲む箱根駅伝予選会の“戦い”とは?
初の地上波生放送で試したい、新たな鑑賞法

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なぜ実力があるのに、落選するのか。ひとつはチームのコンディショニングが影響している。「9月下旬から10月上旬は、暑かったり、涼しかったりと温度差が大きい。気象条件のよいレースに当たると、調子がポンッと上がってしまい、逆に予選会に合わせるのが難しくなる」と話すベテラン監督もいる。直前のトラック1万mで好タイムが出たからといって、それが予選会のロード20kmにつながるとはかぎらない。むしろ好タイムが逆効果を生むこともあるのだ。

ほかに実力上位校が落選する大きな理由を挙げるとすれば、予選会の戦い方を読み違えることだ。ハイペースで突っ込みすぎて、後半失速。前半にペースを抑えすぎて、後半も動かないということもある。逆を言えば、下馬評の高くないチームでも予選会にマッチした戦いをすることで、難関を潜り抜けることもできる。

その代表が2009年の初出場から5年連続で本戦に進んでいる上武大だ。箱根駅伝では21位、14位、19位、16位、18位という成績しか残せていないが、予選会は3位、3位、5位、1位、5位と上位で通過。予選会では力を最大限に発揮している。

では、上武大はどんな戦術を採ってきたのか。最大のポイントは「集団走」で、絶妙なペースを刻んできたことだ。「集団走」は駅伝中継では聞きなれないワードで、予選会特有の攻撃スタイル。詳しくは後で解説するが、その前に、箱根駅伝予選会について、もう少し説明したい。

確実に通過するための、特殊な戦略

例年20チーム(1チームは関東学連選抜)が出場する箱根駅伝だが、2014年1月2日、3日に開催されるレースは第90回の記念大会。出場チームが「23」に増枠すると同時に、関東学連選抜が結成されない。前回大会で10位までに入った日体大、東洋大、駒大、帝京大、早大、順大、明大、青学大、法大、中央学大にはシード権があり、今回の予選会で残りの「13」校が夢のキップをつかむことになる。合計23校がスタートラインに並ぶのは過去最多だ。

また、前回まで予選会の7位以下は、関東インカレの成績に基づく「インカレポイント」を減算した総合タイムでの勝負だったが、今回はポイント制の適用はない。各校上位10人の合計タイムで本戦出場の13校が決まることになる。

予選会の会場は従来と同じ立川市で、コースは昨年と同じ。5km過ぎまでは道幅が広くフラットで、その後も平坦なコースが続く。しかし、昭和記念公園に入ってからの終盤7km弱は、道幅も狭くなり、起伏に富んでいる。落選する大学は昭和記念公園に入って、大きくペースダウンすることが多い。逆に、予選会の戦いを得意とする上武大、神奈川大などは、終盤に順位を上げて、本大会への出場キップをつかんできた。

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