医療の資格者ということで言うと、国内での看護師不足、介護士不足を背景に、経済連携協定を結んだインドネシアやフィリピンなど一部の国から、日本へ看護師、介護福祉士の候補者が来ています。資格を取るのが難しすぎるという問題はあるようですが、実績も徐々には上がってきているようで、グローバルとは言えないまでも、国家間での移動ができるようになってきています。
ただ医師については、まだ外国人の受け入れも日本人を送り出すことも、原則的に行われていません。国内での医師不足を背景に、医師を外に出すという発想はなかなか生まれにくいですし、外から医師を呼ぶというのも、今のところ強く主張する人はあまりいないようです。
TPPの枠組みにおいても日本医師会は、
「日本人医師と外国人医師のクロスライセス(お互いの国の医師免許を認めること)によって外国人医師を受け入れた場合、医療の教育水準の違いから、日本の医療水準が低下する危険がある。日本の医療は、高い医療水準が確保されている日本の医師免許の下で行うべき。また医師不足は、日本の医師数増加によってきちんと解決すべき」
(社団法人日本医師会 TPP交渉参加に対する日本医師会の見解より抜粋)
という立場を取っています。
日本の医療水準に外国人医師はついていけない
日本医師会というのは、医師の利権を守る団体というイメージが強いかもしれませんが、外国人医師を招聘しないというスタンスは、的を射ているところもあると思います。
というのも、以前、私は“国境なき医師団(非営利で国際的な民間の医療・人道援助団体)”の方(日本人医師)にお会いしたことがありますが、国外での支援活動をしていると、ほかの国の医療レベルの低さに愕然とすることが多いとおっしゃっていました。国外においてはほかの国の医師とチームを組むわけですが、日本以外の国の医師の診療技術やその内容がとても古い。
アメリカなどにおいて、一部の診療分野で後れをとっているところはあるかもしれませんが、WHOの評価においても日本の医療は世界最高水準であり、日本医師会が主張しているように安易に外国人医師を招聘したとしても、日本人医師のレベルについていけず、それにより日本の標準的な医療を壊す可能性もある。また医師は患者とのコミュニケーションが非常に重要であり、言葉や文化が違う外国人医師ではコミュニケーションエラーを起こし、それが医療事故につながる懸念もある。それゆえ日本国内においては日本人医師が診察をするという原則が今のところ守られているのです。
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