医師はグローバルエリートになれるか?
医師免許は国境を越える?

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医師は外国に行く必要がない

このように世界最高水準の医療技術が学べる日本においては、医師があまり外国に行くという機会がありません。医学生の間では異文化コミュニケーションを含めて、諸外国での医療を学ぶということで、数カ月にわたってひとつの国に滞在するというケースはありますが、医学生という立場で医師免許はまだ持っていないため、観光の延長といった感じです。

医師免許を取ったら取ったで、その後はたいへん忙しい日々が待っており、初期研修の2年、後期研修の3年間については、有給休暇を取って行く1週間の海外旅行くらいしかないのが現状です。

それ以降になると、日本より外国のほうが進んでいる分野で技術を学ぶ、または基礎研究をするという機会しかなく、しかも身分はあくまで研修生。

昔はアメリカで最先端の技術を学ぶということで、外科系の先生を中心に外国での研鑚はよく行われていたようですが、最近では特に外国に行かなくても日本で最高水準の医療教育が受けられ、臨床分野においてはほぼ国内で十分ということになっています。

日本では、ある意味、医師を育てる教育は充実しており、それゆえ私がお会いする医師についても、留学を含め、年々、海外で研鑚を積む医師は減っているように感じます。

医学生時代はグローバルな交流にあこがれがある

医師免許を取ると、留学を含めて海外に行く機会というのは非常に限られるのですが、とはいえ、優秀で向上心の強い医学生には海外へのあこがれを持つ若者が少なくありません。 弊社は医学生向けに勉強会を開催しておりますが、その参加者の3割くらいは外国への関心があります。ただし実際に何を目的に海外に行くかということを考えると、将来のキャリアに有益なものが見つかりません。

あるとすれば
・NGO(国境なき医師団などを含む)
・基礎研究(日本では臨床の医療技術は高いが、基礎研究の分野においてはマンパワーを含めてそのレベルが下がってきている)
・外国での日本人診療所勤務
これくらいです。

あこがれがあったとしても、日本の医師免許は外国で基本的に使えないので、研究的なものやボランティアなどしかその使い道がない。つまり医師免許が使えるのは基本的に日本国内のみで、医師はグローバルエリートではなく、ローカルエリートの代表ということになるのです。

では、医師にとってグローバルエリートになる道はないのか?

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