「マチズモ」は白人男性の恐怖心の裏返しだ

社会の多様化に追い詰められている

「マチズモ」の象徴的存在であるトランプ米大統領(写真:Kevin Lamarque/ロイター)

過剰なまでに男らしさを誇示する動きが広がっている。トランプ米大統領が売りにしているのは、女性をわしづかみにして、ゴリラのように胸をたたいてほえまくる野蛮人のイメージだ。若い男性にはカナダの心理学者、ジョーダン・ピーターソン教授の信奉者が多いが、教授はやわなリベラルに毅然と立ち向かい、男性優位を取り戻せと主張している。

マチズモのきっかけとなるのは

こうした男くささを美化する風潮は過去にも見られたが、政治的に相当な害をもたらしている。戦間期のイタリアで、マッチョなカリスマ性を利用したのがムッソリーニだ。

乗馬用ブーツを履き、革ベルトに力強く両手を置いた同氏は、しかめっ面でふんぞり返り国民を支配した。あたかも従順な愛人を相手にするかのように。欧州のファシストはムッソリーニをまねて、芝居がかった男っぽさを見せつけることで国民を鼓舞しようとした。

ファシストはユダヤ人を迫害したが、そこで利用されたのがユダヤ人に対する偏見だ。弱々しく、親切でガリ勉というのは男っぽさとは正反対のイメージだ。校庭で上下関係を決める力学が広く世の中にも適用されることで、ユダヤ人は自然といじめの対象になった。

強烈なまでのマッチョ志向は、欧州以外でも見られた。1930年代に日本の軍国主義が醜悪な形を取ったのはよく知られている。

こうしたマチズモの台頭は、屈辱感に端を発することが多い。ドイツでは、第1次世界大戦での敗北と巨額の賠償金など苛烈な降伏条件によって多くの人々が屈辱を味わっていた。屈辱をとりわけ強く感じていたのが兵役経験のある男性だ。ドイツ人は復讐に出た。敵国に対してだけではない。自由主義者やユダヤ人にも裏切り者のレッテルを張り、復讐を加えた。

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