中国と米国のどちらが上に立つのか。世界はまもなく、米中間の歴史的駆け引きを目撃することになろう。この戦いは、直接的には貿易戦争の形を取る。だが、その一方で争点になっているのは、東アジアにおける戦略的な覇権、つまりは世界秩序だ。現在のところ中国は、一般に考えられている以上に有利な立場にある。
この争いは、特に中国が仕掛けたものではないが、起こるべくして起こった。トランプ米大統領は先日、鉄とアルミに加え、多数の中国製品に対して輸入制限措置を発動すると表明した。同氏の看板政策は経済的な排外主義であり、今回の動きはこれに沿ったものである。
あの頃の中国とは違う
貿易戦争に関していえば、中国のほうが失うものは大きい。米国から巨額の貿易黒字を稼いでいるからだ。輸出量が多ければ、制限対象も多くなるのは当然である。
だが、多くの点が見過ごされている。まず、中国は昔に比べれば、貿易戦争に打たれ強くなっている。中国のGDP(国内総生産)に占める貿易の割合は10年前の6割超から3割強に半減している。
内政や外交でも、中国には大きな強みがある。中国は独裁国家だ。米国の制限措置によって打撃を受けた労働者や企業が抗議運動を起こしたとしても、黙殺することができる。一方、米国は11月に中間選挙を控えており、制限措置のせいでコスト高にさらされた企業や消費者からの悲鳴は、明瞭かつ大音量で響き渡ることになろう。
外交の舞台では、米国と貿易戦争を繰り広げることで中国には被害者役を演じるチャンスが巡ってくる。米国が生み出したはずの国際貿易システムにとって最大の敵になっているのは米国だ、と声高に叫ぶことが可能になるのだ。そして米国が仕掛けた貿易戦争が長引き、制限措置の破壊的影響が各国に広がれば広がるほど、中国の主張は正当性を増すことになる。
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