中国が米国を「抑える」のは時間の問題だ 貿易も北朝鮮問題も中国に軍配

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もちろん、米国と正面衝突するのは避けよう、との決断を中国が下す可能性はある。たとえば、液化天然ガスを米国から購入することに合意するとか、中国が窃盗を疑われている知的財産権に対する新たな保証を約束するといった象徴的な譲歩を差し出すことで、トランプ氏に矛を収めさせることができるかもしれない。

しかし、仮に習近平国家主席が、力を見せつけることが中国の国際的な影響力を強め、米国の地位を切り崩すのに役立つと考えたとしたら、習氏は力に訴えてくるかもしれない。

北朝鮮問題でも中国が優位に

北朝鮮問題は複雑だが、ここでも中国が優位に立つことになろう。

北朝鮮に関する根本問題は、同国に核開発を放棄する意思があるのかどうかだが、朝鮮半島の軍事バランスが大幅に変わらないかぎり北朝鮮が核兵器を手放さないことを中国はよくわかっている。

北朝鮮の最高指導者、金正恩氏は、韓国に加えて、おそらくは日本からも米国が軍隊を引き揚げるのを絶対条件として、非核化を提案してくるものとみられている。

体制維持が懸かっている以上、これくらいの条件が整わなければ、核抑止力を手放す気にはなれないだろう。トランプ氏としては、こんな条件に応じることなど、できようはずもない。そのような可能性を将来的に話し合うためのプロセスについて合意するのが、せいぜいだろう。

どちらに転んでも、笑うのは中国である。金正恩氏を交渉の席に着かせることで米国を難しい立場に追い込む。それで米国が軍事的な妥協に応じれば、中国は戦略的にいっそう有利になるというわけだ。つまり、習氏にとって本当の問題とはただ一つ。中国が世界の覇者であることを今、世界にわからせるのか、もう少し待つのか、それだけなのだ。

ビル・エモット 英『エコノミスト』元編集長

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Bill Emmott

英国のジャーナリスト。エコノミスト時代に東京支局長を務め、知日派としても知られる。著作に『「西洋」の終わり』など。

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