スタインウェイ80年ぶり「新型ピアノ」の魅力 アンドロイドは自動演奏ピアノの夢を見るか

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そして2つ目は、過去の名演奏の再現だ。こちらはCD等の記録メディアに残された名演奏家の録音を、上記「ハイレゾリューション・プレイバックシステム」によって解析したデータがスタインウェイ・ピアノを媒介して奏でられる。

言い方を変えれば、スタインウェイという最高級オーディオを通して過去の名演奏を楽しめるということなのだが、その音は本物のピアノ、しかもスタインウェイ・ピアノから発せられるだけに、理論的には限りなく本物の演奏に近いということだ。その意味では元音源もスタインウェイを使用した録音にこだわる点にも納得できる。

さらには、音源だけではなく同期する映像に一部対応しているのも画期的だ。「SPIRIO」を大型モニターに接続すれば、名ピアニストがその場で弾いているかのような臨場感も味わえる。

すべての操作はiPadで

「SPIRIO」には録音機能が付いていないため、自動演奏機能を楽しむための演奏音源配信方法や操作方法にも工夫が凝らされている。購入者にはiPadが提供され、その中に仕込まれたアプリによって「SPIRIO」を操作するのだ。演奏音源は定期的にアップデートされ、ユーザーはその音源をアプリに無料でダウンロードできる。

しかもそのサービスは永久に無料だという。ちなみに現在すでに2800の楽曲や映像が用意され、毎月増え続けるというのだから楽しみだ。これまでCDで親しんできたホロヴィッツ、グールド、ミケランジェリ、ガーシュウィンなどの名演奏がどのように再現されるのか、これはピアノ・ファンならずとも気になるところだろう。

この話題満載の「SPIRIO」を天王洲の「スタインウェイ&サンズ東京」で体験する機会に恵まれた。ラン・ランの演奏するショパンの「子犬のワルツ」を手始めに、グールドの1955年盤バッハの「ゴールドベルク変奏曲」や、ミケランジェリのショパンなど、ファン垂涎の名演が次々に奏でられる。

無人状態で鍵盤が動くさまは過去の自動演奏ピアノでも体験済みだが、ピアニストによって鍵盤の浮き沈みが微妙に違うそのニュアンスまでが反映されるとなると、これは一気にマニアックな世界へと突入しそうだ。

とりわけ興味深いのがiPadでの操作。楽曲リストからの選択はもちろん、音の強弱までもが変えられる様子はまさにピアノの形をしたオーディオ操作そのものだ。

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