スタインウェイ80年ぶり「新型ピアノ」の魅力 アンドロイドは自動演奏ピアノの夢を見るか

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このピアノロールで再生されたピアノの音をCD化したアルバムが『コンドン・コレクション』として発売されているのだが、聴いてみてもどうもピンとこない。正直な話、生きた人間が弾いた演奏に聴こえないのだ。

資料としての価値はそれなりに高いのだろうけれど、ワクワクしながら鑑賞する素材としては物足りない。それが演奏の信憑性を含めた「ピアノロール」の限界であり、現在までの評価なのだろう。

現在望みうる最高の自動演奏がここに

では、スタインウェイが80年ぶりに世に送り出す新製品「SPIRIO」の機能はどうだろう。まず根本的にこの自動演奏ピアノがスタインウェイであることに意味がある。これはクルマの世界に置き換えて、メルセデス・ベンツやポルシェの自動運転を思い描けばわかりやすい。

自動運転機能が付いていてもメルセデス・ベンツやポルシェの高性能はそのままであるように、自動演奏機能を使わない場合にはあくまでも世界最高峰の楽器スタインウェイであり、自動演奏の場合もスタインウェイの素敵な響きを体験できるということだ。

ここで気になるのが、自動演奏を奏でる音源だろう。これについては2つのパターンが想定されている。1つは、ピアノロールがその時代のピアニストの演奏を収録したのと同様、現代のピアニストの演奏を順次収録している。しかし収録においても技術の進歩はすさまじく、「ハイレゾリューション・プレイバックシステム」と呼ばれる独自のソフトウエアが機能する。

その性能たるや、ハンマー速度は1秒につき最大800回、1020段階のダイナミックスレベルに対応し、ダンパーペダルとソフトペダル両方のペダリングは、1秒につき最大100回、256パターンものペダルポジションを認識するという。つまりピアニストが奏でる柔らかなトリルや繊細なペダリング、そして響き渡るフォルティシモなどをこれまでにない正確さで忠実に再現するということだ。

しかもその収録ピアニストの顔ぶれは、ラン・ランやユジャ・ワンなどを筆頭に、1800人にも及ぶスタインウェイ・アーティストのリストから選ばれているのだから申し分ない。

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