情報公開と説明責任(アカウンタビリティー)
よく「イチオシの企業はどこですか」と質問を受ける。その際の返答は「ありません。なぜならイチオシの企業は人によってそれぞれ違うから」というものだ。つまり、すべての学生にあてはまる良い企業は存在するとは考えていないからだ。人それぞれが思考する良い企業像は微妙に違う。「出世は無理だが給料が高いところ」を選ぶ人もいれば「多少給料が高いところ」を選ぶ人もいれば「多少給料は安くても早く出世できるところ」を志向する人もいるからだ。ことほどさように、学生個々人の価値観=職業観は違う。ましてや企業には偏差値なるモノサシは存在しない。何点以上取ったら必ず合格できる大学受験とは明らかに違う性格を持つのが就職活動といえよう。その点から、悪しき偏差値信仰から早く脱却する必要が生じてくる。
さて、私が選ぶ"優良企業の基準"とはいかなるものだろうか。とはいっても具体的にどの企業を指すのかという話ではない。むしろ企業の採用活動における姿勢と表現した方がよいだろうか。それは『情報公開』と『説明責任』という二つのキーワードだ。自社に有利になるような『我田引水』型の企業姿勢とは対極にあると考えてもらいたい。「わが社にはこうした弱点がある。それを○○という手段で克服しようとしている」と率直に話してくれるような企業には魅力を感じている。会社に入るという行為は、入社をしたならば隠していたこともすべてがわかる(企業側でも学生でも)ことにつながりはしないだろうか。変な隠し事を画策するよりも、自社の置かれている立場・環境を、それこそ包み隠さず話してくれる企業を探してみたらどうか。採用のスケジュール、社員のこれまでの出身大学等々、肝心な情報が公開されているかどうかを確認してみたい。
『説明責任』も同様の言葉だ。何らかの問題が起きた時にしっかりと説明責任を果たす企業の存在は心地良く感じられる。だが最近の企業の不祥事では、隠すことによって、さらに窮地に追い込まれるパターンが定着しているようだ。みっともないといったらありゃしない。転じて採用活動における説明責任とは、欲しい人材像を明確にし、そのためにどのような試験(選考)を行うかを明らかにしていくことだ。なぜ入ったかだけではなく、なぜダメだったかをきっちりと説明してくれる企業の増加を願いたい。
菊地信一(きくち・しんいち)
昭和27年仙台市生まれ。仙台一高、早稲田大学商学部卒業後、株式会社文化放送ブレーンを経て、平成2年より「現代職業工房」を主宰。この間一貫して人材採用をテーマに、採用戦略・計画に関するコンサルティングを行ってきた。企業と学生、両者を知り尽くした公正な立場に基づく本音のアドバイスは、企業セミナー、各種講演会でも好評を博している。『履歴書職務経歴書づくりの達人』(中経出版)、『就職活動のすべてがわかる本』(同文館出版)、『日経就職百科』(日経事業出版社)、『自己分析からはじめる就職活動 2010年度版』(日本実業出版社)、『キャリアデザイン入門』(光生館)など、就職関連の著書は45冊を数える。
現在、日本工業大学教授、北星学園大学非常勤講師、東北学院大学非常勤講師、コズモワールド顧問、文化放送キャリアパートナーズ学生支援部顧問キャリアアドバイザー、日本ジャーナリストセンター主任講師を務めるほか、講演・講義を行ってきた大学は85校にのぼる。
昭和27年仙台市生まれ。仙台一高、早稲田大学商学部卒業後、株式会社文化放送ブレーンを経て、平成2年より「現代職業工房」を主宰。この間一貫して人材採用をテーマに、採用戦略・計画に関するコンサルティングを行ってきた。企業と学生、両者を知り尽くした公正な立場に基づく本音のアドバイスは、企業セミナー、各種講演会でも好評を博している。『履歴書職務経歴書づくりの達人』(中経出版)、『就職活動のすべてがわかる本』(同文館出版)、『日経就職百科』(日経事業出版社)、『自己分析からはじめる就職活動 2010年度版』(日本実業出版社)、『キャリアデザイン入門』(光生館)など、就職関連の著書は45冊を数える。
現在、日本工業大学教授、北星学園大学非常勤講師、東北学院大学非常勤講師、コズモワールド顧問、文化放送キャリアパートナーズ学生支援部顧問キャリアアドバイザー、日本ジャーナリストセンター主任講師を務めるほか、講演・講義を行ってきた大学は85校にのぼる。
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