笑って許して!グローバルの無作法
タクシーのドアにはご用心!

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「打包」と「Doggy bag」

中国人は大勢で外食するのが大好きです。レストランで注文する際には、接客係と相談しながら人数に合わせてオーダーするのですが、仲間に対するメンツもあって、あれもこれもと大量の料理を頼んでしまい、結果として多くの食べ残しを出してしまいます。もともと中国では料理が足りないのは恥とされ、客人がギブアップするくらいたくさん振る舞うのが礼儀とされてきました。昨年12月以来、中国政府は官僚のぜいたく自粛を打ち出しており、庶民に対しても「レストランでは料理を全部食べきって無駄を出さないように」と指導しています。

公式のイベントは別として、家族や仲間内の食事の際には、残った料理は「打包(ダアパオ)」といって、容器に入れてもらって持ち帰り、自分で食べたり友達にあげたりするのが中国の習慣です。これはこれで食べ物を無駄にしないためのよい知恵だと思います。アメリカにも、外食時に食べ残しがあると「犬にあげる」という言い訳のもとで、家に持ち帰る習慣(Doggy bag)があります。

日本でなぜこのような「食べ残し持ち帰り」の習慣がないかといえば、まず日本人はそもそも食べきれないようなムチャな注文の仕方をしないということがあるでしょう。人数と胃袋の大きさを計算しながら、きちんとしたプランニングに基づいて最適な量を発注するのが日本式です。もうひとつ、お店の側も持ち帰った食べ物の衛生面まで責任が持てないため、持ち帰りを許さないこともあります。

ところがアメリカ人や中国人は大ざっぱで計画性がないので、食べ残しが出てしまいます。一方、お店の側も細かいことは気にしないので、客が持ち帰った後の安全性などお構いなしです。計画性のなさに起因する問題はフレキシブルな対応で解決するのが、何事にもおおらかなグローバル式と言えそうです。

日本はその対極で、規則を厳密に適用しますから、事前の計画立案力が重要になります。たとえば、私たち広告会社はPRやプロモーションのためのイベントを企画・実施していますが、日本でやるイベントは、どんなに小規模なものであっても分厚い運営マニュアルを事前に用意して、万が一にもミスの出ないよう細心の注意を払って行います。

一方、中国や東南アジアでイベントをやると、事前準備はいい加減でスケジュールどおりいかず、案の定、実施直前の会場で大きな問題が発生することがよくあります。そんなときは、現場の知恵(というより思いつきのことが多いですが)と火事場の馬鹿力で何とか間に合わせて、結果として大きなミスにならなければよい、というスタイルですから、毎回ハラハラさせられます。

グローバルスタンダードに従う必要はないけれど

日本の外に出てみると、人間の考え方や行動は実にバラエティに富んでいて、振れ幅の大きいものだと思い知らされます。日本のやり方を何でもかんでもグローバル式に合わせる必要はありませんが、一歩外へ出たときは、日本の常識を先入観としない心構えは大事です。時には、日本人の美点である「何でもキチンとやりたい気持ち」を抑えてでも、異なるやり方や考え方を、楽しんだり学んだりする余裕を持ちたいものだと、自戒を込めて思っています。

岡崎 茂生 フロンテッジ ソリューション本部副本部長

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おかざき しげお / Shigeo Okazaki

1981年東京大学教育学部卒業、1989年ピッツバーグ大学経営大学院MBA。1982年電通入社、2006年より北京駐在。北京電通 ブランド・クリエーション・センター本部長を経て、現職。30年におよぶ広告・マーケティング領域での経験をベースに、中国企業をはじめタイ、アメリカ、韓国、日本企業などを対象に幅広くブランド戦略コンサルティングを行なう。アジア各国およびアメリカの大学/大学院でのブランド講座・公開セミナー、フォーラムでのスピーチ、雑誌連載など多数。チュラロンコン大学商学部マーケティング学科客員准教授、南京大学ジャーナリズム&コミュニケーション学院客員教授、湖南大学ジャーナリズム・コミュニケーション&映像芸術学院客員教授。

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