ネットとSNSが“歴史の情弱”を生む皮肉
グローバルエリートが後継者を募集?

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橋を架ける人よりも、燃やす人が儲かる世知辛い世の中

さて、保守派とリベラル双方の認識の相違を埋め、都合のいい一部にしか光の当たらないスポットライトではなく、頭の中に蛍光灯をつけて全体像を見られるようにしなければならないのだが、大変残念なことに、この手の非生産的な対立の火に油を注ぎ続けることが食いぶちになっている“ヘイトビジネス請負人”が暗躍している。

彼らは視野の狭さと思考の浅さを共通項とする“歴史認識自慰同好会”みたいなものを形成しており、そこでは中立的で国際的なメディアには全く相手にしてもらえない、いわゆる“つくる会系の三流学者の極めて偏った意見”が、狭い国内のネットでのみ内弁慶的な影響力を振るっている。

中でもいちばん残念なのは呉善花氏のように、右派に担ぎ上げられることで「ほらみたことか、韓国人自身も認めている」というポジショニングになっている人たちだ。彼女は本来ならば両国の友好親善の役割を果たせる位置にありながら、双方の偏見と憎悪を強める仕事をしてしまっている。

もしかしたら、彼女は韓国人として来日し、日本社会に受け入れられず苦しい思いをしたのかもしれない。そして自分を受け入れてもらうために、右派受けするような話をして、それで初めて神輿に担ぎ上げられて、嬉しくなったのかもしれないし、韓国からの強い反発を受けて嫌気がさしたのかもしれない。

呉善花さん、今からでも遅くないので、自分自身を見つめ直して、ご両親がその名を付けたときに思い描かれたであろう“善い花”として、日韓の間の玄界灘に咲かれてみてはいかがか。

SNSとサーチエンジンが、逆に“情弱”を生む?

以前はこのような極端な歴史修正主義者の “言説”はマジョリティにはなりえず、せいぜい傾いた本屋さんの不人気な暗いコーナーの片隅に積まれて一部の軍事オタクかが立ち読みするのが関の山であった。

しかしネットやSNSの普及によって状況は一変した。つまり知識と善意のない人に危ないオモチャを渡してしまったので、荒唐無稽なデマだと判断できないメディアリテラシーの欠如した層に、瞬時にしてデマが浸透するようになったのだ。例えば私は “有名収入はもらってないのに、有名税だけ払いまくっている”わけだが、最近私が “ハーバードの客員教授と経歴詐称した”とかいう書き込みが出回っていたのだが、この手の“勝手にデマを作り上げて、それを拡散させて相手を批判”というやり方が蔓延している。

ネットの書き込みやツイッター、SNSのコンテンツは10%の“しょっちゅう書きまくる人”によって80%のコンテンツが作られているというが、歴史や対外認識関してはそのコンテンツの99%以上をいわゆるネトウヨの皆さんが創り出し、拡散させている気がする。結果的にまともな高等教育機関で歴史を研究した国際的な知識人ではなく、ネットで遊び、2ちゃんねるとツイートで拡散する人に世論形成の影響力がシフトしてしまったのだ。

グーグルの発達が人々の偏見を強める?

おまけにグーグルなどサーチエンジンのカスタマイズ化も歴史認識を巡る偏見の強化に拍車をかけた。これはサーチエンジンがその検索者の嗜好に合わせてカスタマイズしたコンテンツを提供してくるので、何を検索しても彼らが求める“中韓の悪口”が大量に検索結果に表示されるのだ(ちなみに中国・韓国の保守派に関しても同じことが起こっていいると思われる)。

今後サーチエンジンとフェースブックやツイッターのソーシャルネットワークの連携が強まれば、人は自分のコミニュティにいる人の発言に影響を受けやすいので、ますます偏った視点に特化した、悪意あふれる偏見の塊のような人が大量生産されかねない。

最悪なことに、周囲におもねる傾向の強い今のメディアは、世論を引っ張るのではなく、逆に世論に引っ張られて言説内容も右傾化を果たす。オピニオンリーダーであるべきメディアがオピニオンフォロワーに成り下がってしまったのは情けないかぎりだ。

もはや賢い人が書く小難しい本や新聞記事がマスに与える影響力はなく、IQとEQの低い人が2ちゃんねるやツイッター、フェイスブックでつくる“世論”に、お馴染み三流週刊誌どころか伝統的大手メディアが迎合するという、なんとも情けないサイクルに陥ってしまっている。

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