他者の成功例が失敗よりアテにならない理由

不安は無視しても意識しすぎてもいけない

成功法則ではなく、失敗ばかりを集めている理由を問われると、マンガーは「成功の要因はいくつもあり、複雑で、何が寄与しているのかわからない。しかし、失敗の要因は明らかだ」と答えています。

失敗ノートは、他人の不運を調べてためておくノートです。自分のミスは書き残さなくても、痛みとともに記憶に残っています。人のミスを省みることで、自分に舞い込むであろう不運を未然に防ぐことができるのです。

同じ轍を踏まないための軌道修正ツール

たとえば、企業が倒産するときには必ず資金がショートします。このキャッシュフローが足りなくなるという失敗の背景にありがちなのが、1つのジャンルで成功してビジネスを拡大しようと異なる分野に投資をするという行動です。

自分の専門外のことを調子に乗って始めるパターンで、数えきれないほどの企業が倒産という不運に見舞われてきました。

この失敗パターンをはっきりと認識しておくと、同じ轍を踏むことがありません。つまり、不安を遠ざけることができるのです。

一方、成功要因はたくさんありすぎて、特定しにくい面があります。

たとえば、革新的なデバイスとして登場したiPhoneは、世界中で大成功を収めました。しかし、成功要因を1つだけ挙げろと言われても、デザイン性のよさなのか、カメラの性能なのか、操作感の新しさなのか、スティーブ・ジョブズのスピーチがすばらしかったからか、そのどれもかもしれませんし、本当はどれでもないかもしれません。

ただ、結果として大成功したという事実があるだけです。そのため、iPhoneの成功要因を思いつくだけ書き出したとしても、それをまねることは難しく、自分が成功に至る道筋を歩んでいるという安心を得ることはできません。

つまり、他人の成功から学ぼうとする成功ノートを作っても、逆に混乱する可能性があるのです。

ちなみに、チャーリー・マンガーはある取材で、「神様が現れて、どんなことでも教えてくれると言ったら、何を知りたいですか?」と聞かれたとき、こう答えています。

普通に考えれば、株式投資で成功してきた人物ですから、「10年後のアメリカのことを知りたい」といった答えを予測するでしょう。

ところが彼は、「自分がどこで、どういうふうに死ぬのかを知りたい」と言い、こう続けました。「そのうえで、その場所には絶対に行かないように生きていく」と。

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