タイガーマスク"伊達直人"が本名で語る意義 正体を明かした会社員が見つめる過去と今後

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就職した河村さんは、会社の寮で暮らし始める。そして、すぐ近くにある児童養護施設の支援をするようになった。その後、前橋市に転勤になり、同市にある児童相談所にランドセルを置いたことから、タイガーマスク運動は全国的に広まっていった。

「Nさんと出会ってなかったら、支援活動もタイガーマスク運動もなかったでしょう。それどころか、生活に困って犯罪に手を染めていた可能性もある。出会いというのは、数奇な運命のもとで起こります。僕はNさんと出会うべくして出会ったのかもしれませんね」

「まず自分の家族を大事にしてください」

今後もライフワークとして、子どもたちの支援活動を続けていくという河村さん。自分にも何かできることはないか、と申し出てくれる人に、必ず伝えていることがある。それは、まず自分の家族を大事にしてください、という言葉だ。

「まずは自分の家族、次は友達や親戚など、身の回りの方を大事にしてください。もう少しゆとりがあれば、近所の子どもにも目を向けてください。暴力を振るわれた痕があったり、やせ細っていたりしたら、学校や児童相談所に相談してあげてほしい。国民全員がそうしていけば、擁護支援そのものがいらなくなります」

大きなゴールですが、目指すのはそこですね、と河村さんは展望を語った。無償の愛を子どもたちに注ぎ続ける河村さんは、あしながおじさんのような富豪でも、タイガーマスクのようなヒーローでもない。ごく普通の会社員であり、一般市民である。しかし、原体験を通じて生まれた子どもたちへの思いや志、使命感、恩師への感謝など、さまざまな要素が彼を突き動かした。そして約20年もの継続した支援という、まさに伊達直人を地で行くような活動を行っている。

その姿やメッセージは共感を集め、社会を動かし、大きな流れを生み出した。いつの日か、もし河村さんが活動を終えたとしても、その思いは受け継がれ、子どもたちへの支援は続けられていくだろう。

誰もが彼のようにはなれない。けれど、その生きざまに少しでも感銘を受けたら、まずは家族と過ごす時間を、いつもより少しだけ大切にしてみてはいかがだろうか。

肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

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こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京都生まれ。ルポルタージュや報道系の記事を主に手掛ける。著書に『究極の愛について語るときに僕たちの語ること』(青月社)、『フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。』(実務教育出版)。東京・新宿ゴールデン街の文壇バー「月に吠える」のオーナーでもある。ライフワークは愛の研究。

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