タイガーマスク運動で注目を集めた河村さんだが、実は1998年3月、24歳の頃から、養護施設の支援を行ってきた。具体的には毎月1万円の寄付、ランドセルやクリスマスプレゼントの贈呈など。それを約20年間、休みなく続けてきた。決して高給取りでもない、“ごく普通”の会社員である河村さん。費やしたおカネや時間は相当なものだが、「まったく大変だとは思わない」と話す。
「僕は未婚で子どももいません。けれど一般的な親って、自分よりも子どもを優先するはずなんです。疲れていても子どものためになら頑張れる、子どものためならいくらおカネを使っても惜しくない、って。僕の感覚もそれに近いんだろうと思いますね」
なぜ子どもの支援をしているのか
その原動力は、河村さんの幼少期にある。3歳のときに母親が死去し、親戚に預けられた。しかし新生活も決して満ち足りたものではなかった。小学校に上がる際にランドセルを買ってもらえず、手提げ袋で学校に通った。食事を満足に与えられず、栄養失調になったこともある。そんな原体験が、大人になった河村さんを、養護施設の支援へ突き動かしたのだった。
なぜ子どもの支援をしているのか、周囲に理解されないこともあった。「実は自分の子どもが施設にいるんじゃないの」「何かの罪滅ぼしなのでは」と言われたこともある。正体を明かした後は、「有名になりたいんでしょ」「いい格好したいだけ」「政治家になるためにやってる」など、悪意のある批判も受けた。
しかし、活動をやめようと思ったことは1度もない、と河村さんは断言する。その大きな理由は、支援を受けた子どもたちの喜びに触れられることだった。
「クリスマスプレゼントを受け取った子どもたちが、色紙に『サンタさん、ありがとう』『プレゼント、うれしかったです』など書いてくれたんです。それを職員の方が僕に送ってくれて。受け取ったときは涙がこぼれました。1000万円、いや、1億円出しても買うことができません、子どもたちからのメッセージは」
河村氏は伊達直人と同様、匿名で支援活動を行っている。正体を知っているのは職員だけ。子どもたちからは、「施設によく遊びに来るおじさん」と思われているという。しかし、自分が支援者だと明かすつもりはまったくない。施設の子たちがいつか親になったとき、自分の子どもの枕元にプレゼントを置いてくれればそれでいいんですと、と河村氏は笑顔で語った。
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