話の「伝え下手」な人は何が欠けているのか ハーバード大で人気!説得力をもたせる技術

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そこで議論の中心になるものを改めて考えた結果「静かな住環境」ではなく「権利」について話すべきだろうという結論に達した。議論の核はこうなる。「騒音は控えよう、なぜなら自宅での静かな生活を楽しむ機会を台なしにしてしまうから」

ステップ2 どのように話を組み立てるか

話の組み立て方の基本は何千年経っても変わらない。まず「エートス(人柄)」、次に「ロゴス(論理)」、最後に「パトス(感情)」である。

まずは、聴衆を引きつけるところから始める。次に、あなたが聴衆と共通の価値観をもっていること、良識をもっていること、聴衆の利益を考えていることをアピールして、聴衆に好意をもってもらえるようにする。さらに、聴衆にあなたとの一体感をもたせる。ここまでが、「エートス(人柄)」である。

そのあと、あなたの主張を持ち出す。事実から話を始め、あなたの立場を主張し、あなたの考えるポイントを論理的に述べる。そして相手の主張を退ける。ここが、「ロゴス(論理)」にあたる。最後に、聴衆の「感情」に訴えかける。

人柄→論理→感情の順で使うとうまくいく

「エートス」「ロゴス」「パトス」の順で使うのが最もうまくいくことを、ぜひ覚えておいてほしい。そして最も説得力のある言葉を、最初と最後に持ってくることが大切だ。

ステップ3 どんな言葉を使って表現するか

次は、どんな言葉を使ってそれを表現したらよいのかを決める。レトリックでは、聴衆になじむために文体を選ぶ。

1つ目は、適切な言葉、つまり、その場とその場にいる聴衆に合った言葉である。

悪い例:
内部で燃焼するエンジンの轟(とどろ)きや、それが周りの丘でこだまするのが好きな人も、なかにはいるでしょう。一方で、オデュッセウスが広く静かな海に漕ぎいでるように、静かな空間で魂を入れ替えたい人もいるでしょう。
良い例:
自分の敷地内でデジタルテレビを見たりスノーモービルを楽しみたい人もいるでしょうし、もっと静かな環境で暮らしたい人もいるでしょう。

2つ目は、上記の適切な文体のようにわかりやすい、ということである。3つ目は鮮烈さだ。聴衆の目の前で"本物らしさ"を出せるかどうか。スピーチのなかでも、ストーリーと事実を述べる部分で最も強い効果を発揮する。

悪い例:
人々はこうした騒音から著しい悪影響を受けています。
良い例:
リード夫人は私にこう話してくれました。彼女の敷地の裏にある小川を下っていったところにビーバーの巣があるのですが、そこへ行っても最近は、ビーバーたちが寄ってきてくれないときがあるそうです。そこで、彼女はりんごを両手に持ち、笛をぶら下げて、自宅から800メートルほども下っていったそうです。周りが静かであれば、ビーバーたちは寄ってきてくれます。

4つ目は最も大切なディコーラム、適応する技術だ。私の場合、同じアクセントを使うのではなく、地元の人が言っていたのと同じことを同じように言ってみようと思う。

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