話の「伝え下手」な人は何が欠けているのか ハーバード大で人気!説得力をもたせる技術
最後の5つ目は、声のリズムや言葉の巧妙さに関するものだ。私の場合なら、簡素なものが最も効果的だが、終わりのほうでこう言ってもいいかもしれない。つまり、こういうことだ。私たちが騒音をコントロールするのか、騒音に私たちが振り回されるのか。
古代ギリシャ人は、記憶について独特の考え方をしており、レトリシャンたちは生涯を通して、記憶術の練習に励んでいた。現代の私たちは、たとえば、パワーポイントを使うことができる。スライドに載せられたイメージ――写真、図表、グラフ――を聴衆と一緒に見ていくことで、語り手は何を話すべきかを思い出すことができるはずである。
「発表」では、声、リズム、息継ぎのタイミングとともに、ボディランゲージも重要だ。
声について考えてみよう。理想的な声は、大きくて、安定して、柔軟性がある声だ。声が大きいのは、伝える能力があるということだ。長い演説をするときは、序盤では甲高い声など出さず、静かに話して声を温存することが大切だ。
柔軟性というのは、そのときどきに応じて、声のトーンを変えられるということだ。最初は、柔らかい口調を使うといい。スピーチの終わりに向かって徐々に声を大きくしていく。聴衆の気をそらすようなジェスチャーは控えるべきだとされている。間違った印象を与えるジェスチャーをするくらいなら、何もしないほうがいい。
キケロが起こした事件
だから私は、顔の表情に的を絞ろうと思う。これもまたキケロの教えなのだが、「目は心の窓」である。目の表情が、何よりも雄弁なジェスチャーとなるだろう。
キケロの論理だけではなく、彼のエピソードも私を勇気づけてくれる。かつてフォロ・ロマーノで行われた重要な裁判で、キケロは緊張のあまり話すのを中断し、そのまま逃げ出してしまったという。歴史上、最も偉大なレトリシャンであり、ジュリアス・シーザーから共和国を守った男が、逃げ出したのだ。恥ずべきこととはいえ、この事件はのちのレトリック界に大きく寄与するものとなった。
なぜなら、このことがあって以来、スピーチをする者は、最も雄弁な人でさえ逃げ出すことがあると考えて、不安を落ち着かせることができるようになったからだ。
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