「子どもの知性が伸びる教育」の3つの特徴 人生100年時代に向けて大人がやるべきこと

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子どもの自分ごと化を引き出す方法として、自分の身の回りの困っている人、笑顔ではない人を探し、その背景にある社会の課題に自ら気づくという形でテーマとの出会いを設計してみるのもいいだろう。このプロセスにおいては”心をくすぐるような”問いやテーマとの出会いと、「正解の存在」や「規範」を完全に排除したコミュニケーションが欠かせない。

そして「正解のない問い」や「葛藤を生む課題」に、自ら始めた取り組みの中で出会うこと、その葛藤を越えるために手放さなければいけないことの大きさを感じ、時には後悔も抱えながら、決断しプロジェクトを進める体験こそが重要なのである。自分で気づき、自分で前に進んでいくということが大切なのである。

このとき大人たちには、自分が想定する答え以上の答えを子どもたちが生み出すということを心の底から信じ、自分の正解を手放して覚悟を持って見守ることが求められる。さらには、自分で考えた課題解決の方法を客観視させ、その課題や問題点を自分自身で考えさせるようなプロセスも必要かもしれない。

学びのプロセスの中に意図的に混沌を仕組むことが重要だ。自分が考え思いを込めて進めてきたプロジェクトの課題を自分で発見し、時にはやり直しが必要となるような障壁との出会いは、彼らに葛藤を与え、それを越えるために自己の変容を促すだろう。

自己を支える「核の獲得」とは?

「自己変容型知性」の育成に必要な要素の2つ目は、自己を支える「核の獲得」である。キャリア教育が盛んに行われるようになってから10年以上たつが、現在学校教育において行われているキャリア教育のほとんどは「情報提供」と「夢探し」である。昨今、多くの学校が社会に開かれた学校を標榜し、さまざまな場面で社会人が学校に赴くようになった。読者の方にも、母校や地元の学校で仕事やキャリアについて話をした経験を持つ方がいるだろう。

そのおかげで、昔は冊子を通してしか知ることのなかった幅広い仕事や、職場体験を通してでも1つや2つしか体験することできなかった職場のイメージに触れやすくなった。それ以前は親や先生の情報から自分の将来像を描くしか方法がなかったのだから、大きな進歩である。

こうして広がった仕事のイメージを基に、自分のキャリアや夢を考えていくというプロセスが多くの学校で行われているキャリア教育である。そして、自分が語った(語らされた)夢や将来像はそのまま「モチベーション装置」とされる。つまり、彼らがこれから乗り越えていかなければいけない受験や進路選択の中で「●●になりたいって言ってたじゃないか!」「そんなこともできないと○○には到底なれないぞ」と、彼らを煽り高めていくテコになるのだ。

確かに、こうした形で夢を実現する若者は少なくないだろうし、そうではなくても努力する理由にはなるかもしれない。しかし、こうしたプロセスは人生100年時代以前のキャリア教育と言わざるをえない。

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