「子どもの知性が伸びる教育」の3つの特徴 人生100年時代に向けて大人がやるべきこと

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前回の記事で紹介したように、学び直しやキャリアの選び直しが必須となる人生100年時代において、一つの夢を見つけそのためにがむしゃらに努力することを推奨するキャリア教育はすぐに限界が来る。自分の努力を支えたテコである夢が叶わなかったとき、あるいはその夢としていた職業がAIにとって代わられてなくなったとき、自分を支えるモチベーションが失われてしまうことは大きなリスクである。

むしろ変わり続ける社会の中で自分が大切にしたい価値観や思いを、職業や進路選択に紐付けない形で自覚することを目指すべきだろう。いまある職業の半分がなくなるかもしれない未来を生きる彼らに、いまどんな仕事に就きたいのかを考えさせるのは、半分の子にとっては間違いなく意味のない営みになってしまうのだ。

重要なのは「自分がありたい姿」であり、何を大切にしていきたいのかということである。いまこの瞬間、何かを成し遂げているか否かにかかわらず、いまここにいる自分を大切に生きるということが重要なのだ。そのためには、自分を深く幅広く知っていくこと、そしてそれがどんな自分であれ、周りの友人や大人が承認してあげることがとても有効だろう。

大人は、いまの成功の理由を学生時代から探し出し、いかに努力し続けてきたかをアピールするのではなく、紆余曲折や挫折、夢の変遷を言葉にして届けることを通して、一日一日、いまを大切に生きることの重要性を語ること。そして彼らのありのままを受け入れることを通して、一人ひとりの子どもたちや若者がそれぞれに持っている可能性を手放しに信じられるようにしてあげることのほうがこれからのキャリア教育においてはよっぽど重要だろう。

「学び手を主役にしたストーリー設計」とは?

3つ目は、「学び手を主役にしたストーリー設計」である。南アフリカ出身の数学者で発達心理学者でもあるシーモア・パパートは、学習や教育を支援するテクノロジーの導入において重要なこととして“low floors (ハードルが低いこと)” と “high ceiling(奥行きがあること)”を挙げた。さらに、子どもたちが簡単に使えるプログラミング言語Scratchを開発したMITメディアラボのミッシェル・レズニックがこれに“wide walls (幅が広いこと)”を加えた。

つまり学びのプロセスを設計する際には、誰もが挑戦できること、そのために遊びの要素があること(low floors)、意欲や習熟度によっては難易度の高いチャレンジや深い探究が可能であること(high ceiling)、そして、答えが一つではなく、取り組み方や関心、興味によって無数の可能性や自由度、多様性が許容されているということ(wide walls)が、これからの学びの場には重要なのである。

これら3つの点は、学び手を主役にしたストーリーが設計されていることの重要性を表している。うっかり始めてしまうくらいハードルが低く、幅広い正解の設定によりできるだけ早く成功体験が積め、それによって「もっとやりたい」という気持ちが高まる。そして、やりたいという思いを無限に満たし続けられるほどの探究の可能性が設計されていることにも留意すべきだろう。そのことで生徒たちが物語を自由に生きていくような心の動きが生まれ、それによって学びや学ぶ意欲が生まれていくのだ。

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