地下3000メートル!「CO2貯蓄施設」の実態 苫小牧の実証実験センターを現地ルポ
奥にある坑口装置は地下約1000メートルの「萌別層」という地層につながっている。パイプに耳を当てると遠くで「ゴォー」という音が聞こえる。内部では7.6メガパスカル(76気圧)でCO2が流れているという。
手前の坑口装置からは地下約3000メートルの「滝の上層」につながっている。こちらは深いだけにCO2の圧力は高い。萌別層までで3カ月、滝の上層までは5カ月かけて掘り進んだ。
この施設を運営するのが日本CCS調査。電力、石油、ガス、エンジニアリング、商社など35社が出資する、文字どおり日本でCCSの可能性を調査するための会社だ。
CCSを実施できる場所の選定からプラント建設、運営までを経済産業省から請け負っている。「ここにある設備は新しい技術で開発されたわけではない。既存の技術を組み合わせてうまく動くかを検証している」と説明するのは同センターの宮村宏広報渉外グループ長。
海外では稼働しているプラントも
CO2の分離・回収プラントは化学工場などで使われる技術。掘削は油田などの資源開発の応用技術である。技術的には十分に実現可能なのだ。そもそもCCSは海外で1970年代から多数実施されている。もっとも海外のCCSの大半はCO2削減のためではなく、原油増産が目的である。
油田は操業が進むと地下の圧力が低下することなどから、原油埋蔵量があっても生産量は減退してしまう。そこで液体やガスを送り込み、原油増産を図るEORという技術がある。海外のCCSの大半は、CO2を使ったEORである。
ここにCCSの最大の難しさがある。CO2の回収にも地下への圧入にもコストがかかる。EORならば原油増産のメリットでこのコストを回収できる可能性がある。しかし、EOR以外のCCSでは利益を生まない。
CO2排出に対する課税、もしくはCO2排出削減に対する補助金がない限り、事業者に導入するインセンティブが働かないのだ。油田がほぼない日本でCCSを実用化できるか。これを検証するのがセンターの役割だ。
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