地下3000メートル!「CO2貯蓄施設」の実態 苫小牧の実証実験センターを現地ルポ

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もちろん実証施設でプラントの規模自体が小さいため、処理できるCO2当たりの単価が割高になるなのは仕方ない。理論通りにCO2を圧入できるか、圧入によって地震が起きないか、貯留したCO2が漏れてこないかなどを検証する目的がある。そのうえで地域の不安を解消し、CCSへの理解を深めることも大切な役割だ。

このためCO2センサーや圧力センサー、地震計などをぜいたくに配置し、厳重なモニタリング体制を敷いており、いざ実用化となれば削れる費用はある。「CCSはCO2削減の切り札となる。技術的には十分に使えるし、海外プロジェクト並のコストは見えてきた」と日本CCS調査の石井正一社長(石油資源開発副社長)は強調する。

漁業関係者は理解を示すが……

「CO2がどこまで因果関係があるかはわからないが、環境が大きく変化していることを漁業関係者は肌で感じている」と語るのは、苫小牧漁業共同組合の長山和雄専務理事。

かつては少なかった台風が近年目に見えて増え、漁具に被害を受けることが多くなった。ブリやイナダなど南方の魚種が増える一方、スケトウダラやスルメイカの漁獲高が減っている。だから、「温暖化は自分たちの問題と思っているので実証試験への理解や協力はしている。ただし、経産省や環境省には主張すべきことはしっかり主張していく」(同)。

実際の圧入地点はタンカーがある辺りの海底の地下深く(記者撮影)

やはりCO2貯留への漠たる不安は拭えない。将来にわたって風評被害が起こらないかも気になる。実用化に際してモニタリング体制を省力することは、協力的な苫小牧漁協でさえも受け入れるのは難しそうだ(苫小牧で実用化が決まっているわけではない)。

CO2排出量が多い石炭火力発電はCCSなしでは認められない国が出てきている。このためCCSは石炭火力の命綱という見方がなされている。それだけの役割ならCO2を出さない再生エネルギーによる発電が普及すれば、CCSは必要ないかもしれない。

だが、再エネが頼りにならず、原子力発電も受け入れないとなればCCSは必要になる可能性がある。相対的にCO2排出が少ない天然ガス火力でも、排出はゼロではないからだ。また、製鉄所や石油化学プラントなどからもCO2は放出される。こうした産業からの排出は、発電と異なりCO2フリーの代替手段がない。

地球温暖化が深刻化し最低限のCO2排出しか許されないとなれば、CCSに頼らざるを得ない局面が出てくるかもしれない。結局、再エネなどの技術進歩とCO2削減の必要性のバランス次第で、CCSが不要かどうか決まってくるのだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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