20〜30代女性に「異色スープ本」がウケる必然

包丁や出しを使わないものも

有賀氏によると、理由の1つには、日本にスープ作りの伝統がなかったことがある。「先日、都内の保健センターで講師を頼まれて50~70代の女性が集まったとき、『スープを作ったことがないから、どんなものかと思って』と皆さんから言われたんです。自分で作るとなると、コンソメの素を使い野菜を刻んで入れるぐらいしかできない人が多い」(有賀氏)。

確かに日本人は味噌汁を食事の定番にしてきたが、外国料理にベースがあるスープとなると別だ。洋食や中華を、庶民が日常的に作るようになったのは高度成長期以降。その頃生まれた有賀氏も、「うちの母親も、スープはコーンポタージュなど数種類ぐらいしかレパートリーはなかった」と振り返る。

スープを食べる機会自体は増えている

にもかかわらず、レシピを知りたいという需要があるのは、スープを食べる機会自体は増えてきているからだろう。1980年代以降、ファミレスやコンビニが増えたことで、昼食を外食や中食で済ませる人が多くなった結果、定食のー品としてスープを食べる機会は増えているのだ。とはいえ、こうしたスープは具材がほとんど入っておらず、家庭料理以上に「添え物感」が強いうえ、たいしておいしいわけでもなかった。

そこへ参入してきたのが、「食べるスープの専門店」をキャッチフレーズに掲げ、おしゃれ感を打ち出したチェーン店「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」だ。1号店は1999年、お台場のヴィーナスフォートにできた。具だくさんでヘルシーさを印象づけることに成功して快進撃を続け、現在は都内だけでエキナカ・駅ビルを中心に32店舗を展開している。

ここ数年は、具だくさんスープは静かなブームを呼んでいる。レシピ本の出版が相次ぐほか、2016年秋にはローソンやセブンーイレブンなど、コンビニ各社も具だくさんのスープを販売し始めている。

スープ作家の有賀氏(筆者撮影)

とはいえ、食べるスープを家庭で実践するのは手間がかかる。1人暮らしや2人暮らし、外食も多い働き盛りの場合、残った食材の処分に追われる。レシピ本はあっても、その料理を実際に日常に作れる人は限られているのだ。そんな中登場したのが、有賀氏による具材が少なく手間もかからないが、メイン料理として成立するレシピ本だったというわけだ。

有賀氏の下に集まる反響の声として多いのは、まず「これなら私にも作れる」というもの。意外だったのは、「出しを使わないで料理することが、ちゃんとしている感がある」という声を複数聞いたことだという。出しパックなどを使った場合、具が何であれコンビニで買ったお総菜のように、似たような味になってしまう。「それでは作った喜びがあまりないのではないか」と有賀氏は推測する。

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