ヤマダ電機が「インテリア・家具」を狙うワケ 家電量販店が模索する「勝ち残り」の道

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そこでヤマダ電機では、家電事業と住宅事業を橋渡しする役目として、家具・インテリア雑貨の取り扱いを開始した。家電製品に比べて、生活雑貨・インテリア雑貨は単価は低いものの購入頻度が高い。来店客との接触機会を高めることで家電の1人当たり単価も引き上げ、同時に家具の購入、そしてリフォームおよび新築双方の住宅ビジネスの認知度を上げる狙いである。

住宅を購入→家具と家電の購入→日々の生活雑貨の購入→10年後のリフォーム、または、生活雑貨購入→家電購入→リフォーム・新築→家電購入という、住環境をめぐるエコシステムを1社で作り上げようとしているのだ。

この循環ビジネスの強化のために行ったのが2つ目の施策、リフォーム専門店であるナカヤマの買収だ。

ナカヤマは年商200億円以上で、独立系リフォーム企業としては国内トップの地位にある。全国に100カ所弱のショールームを構えるが、ヤマダ電機の狙いはナカヤマの営業力にある。

これまでに、ヤマダ電機のリフォーム営業は主に“待ち”のスタイルだった。自社のレギュラー店舗内にリフォームコーナーを設け、新聞折り込みチラシで告知したり、家電購入のために来店した客を案内して認知を広めてきた。一方で、ナカヤマのスタイルは外販営業。各地の営業担当がローラー作戦で地域を回り、顧客を開拓していく。“待ち”から“攻め”の営業スタイルに広げることで、リフォーム事業の拡大を狙っているのである。

昨年、ヤマダ電機は便器や洗面化粧台など住宅設備メーカーのアサヒ衛陶とも業務提携、すでに子会社化しているキッチンメーカーのハウステックとともに住宅設備でオリジナル製品を開発していく方向性も示しており、住宅ビジネス分野において製販両輪で体制強化をしているところだ。

さらに、賃貸住宅・土地売買の斡旋、ファイナンス(住宅ローンなど)、保険、冠婚葬祭といった生活にかかわるサービス分野でも続々と事業を立ち上げており、まさに“ゆりかごから墓場まで”を実践しようとしている。なお、ベンチャー企業のFOMMと資本業務提携し、2020年までに小型電気自動車事業への参入も計画しているが、これも、家電と住宅の融合戦略の一環だ。子会社であるハウスメーカー2社が販売するスマートハウスのメニューとして組み込む計画なのである。

ヨドバシはスピードと品ぞろえでアマゾンに対抗

一方、ヨドバシカメラは早い時期からネット通販事業に力を注いでおり、現在、年間売上高1000億円を超え、家電量販店としてはトップの実績を誇っている。ヨドバシの2017年3月期の全社売上高は6580億円であり、ネット通販の売上比率が15%を超えているのは家電量販店では同社だけだ。

これまで、川崎に総面積28万平方メートル広大な物流センターを整備し、取扱品目数は500万を超え、社員による即日配送など、アマゾンに対抗すべく体制強化してきたことで積み上げた実績である。特に東京都内23区および一部市部で提供されている「エクストリーム便」(最短2時間30分で配送)が都市型先進層に支持され、アマゾンが配送問題で混乱続きだったときに、多くのユーザーがヨドバシに流れたほど人気が高い。

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