ライオンズ「帽子30万個」小学生にあげた意味 西武球団が40周年事業で実現したいことは?

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球場に来たことのない子どもたちがキャップを通じて興味を持つきっかけになるかもしれない(筆者撮影)

昨シーズンのライオンズの観客動員数は167万人を記録し過去最多だったが、セ・パ両リーグ中10番手(パ・リーグの中で4番手)の水準だ。

さらに動員数を増やすためにはリピーターだけでなく球場に来たことのない新規のファンを呼び込む必要がある。

キャップを被ることでライオンズへの愛着が生まれ、子どもたちがファンとなれば、球場に親子で観戦に来る機会が増えるだろう。観客動員数が増えることはもちろんのこと、球場での飲食やグッズ売り上げの増加にもつながる。

本拠地メットライフドーム主催試合の場合には、西武線の利用も確実に増える。また、熱心なファンになれば、一度で終わることなく、何度も足を運ぶようになるだろう。球場での観戦をきっかけとして野球に取り組む子どもたちも出てくれば、野球人口の増加にも貢献し、将来のスター選手の発掘にもつながるかもしれない。

「L-FRIENDS」プロジェクトの狙いについて、西武ライオンズの井上純一事業部長は「『L-FRIENDS』とはL(LIONS)が友だちを拡げる活動を意味する。3本の柱である野球振興・こども支援・地域活性で活動を行ってきた。ただ、活動を数年実施してくると、活動単体としては有意義であっても、それだけでは決して課題は解決されないこともわかってきた。

3つの柱である活動はすべて何らかのかたちでつながっており、それらを紡ぐワードが必要になったことに気づいた。そこでL-FRIENDSというわかりやすい共通言語を使って、コミュニティの輪を最大化していくことにした」と説明する。

躍進したDeNAも過去にキャップを配布

過去にベースボールキャップを贈呈した球団としてセ・リーグの横浜DeNAベイスターズの事例もある。2015年末に神奈川県の子どもたち約72万人に「5周年ロゴ入りベースボールキャップ」をプレゼントしている。神奈川県での地域密着の活動を続けると同時に昨年は日本シリーズに進出、好成績だったこともあり、同球団は過去最多の観客動員数(198万人)を記録している。

ライオンズとしても、ファンが多い地域は西武線沿線が中心であったが、球団は埼玉を冠する球団として埼玉県全域での浸透を図りたい考えがある。そのためには、西武線と直接つながっていない地域でもライオンズの存在感を高めることが重要になる。

今回のベースボールキャップ贈呈について福岡県に在住する福岡ソフトバンクホークスファンの40代男性は「ライオンズの地域密着に向けた取り組みをホークスも見習う必要がある」と注目する。埼玉を冠した球団として埼玉県民に愛される球団を目指すライオンズの取り組みに、他地域からも熱い視線が向けられている。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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