健康を食い物にするサイトに下された審判 「私たちの声はグーグルに届く」

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大学や公的機関のウェブサイトというのは、往々にして文字が小さかったり、装飾に乏しかったりして、読みにくいものが多いですよね(もちろんこれには、非営利のウェブサイトほど、営利目的のサイトと比較して工夫を凝らしにくい。誠実に正しい情報を伝えようとすればするほど、地味にならざるをえないという悩ましい問題があるのですが)。

検索エンジンが利用者のためを思って利用者の行動を指標としたことで、かえって、望ましくないサイトの検索順位が上がってしまうというのが、グーグルの抱えるジレンマです。

違法に動画を配信するなど、問題であることが明らかなウェブサイトであれば、検索エンジンに通報し、検索結果から消すことができます。

しかし、医療情報に多く見られる誤りを含むことや、倫理の問題があることによる違法ではないが有害な情報は、かえって対策しにくいものとなっています。

もともと、グーグルは健康・医療をはじめとする、財産や生命にかかわる「YMYL(Your Money or Your Life)」領域では、特に信頼性と専門性を重視すると表明していました。しかし、信頼性を重視しすぎると有益な情報が表示されなくなり、利用者の要望を重視しすぎると問題のある情報が表示されるジレンマからは、抜け出せていません。

また、2016年末に発覚したWELQ問題を未然に防ぐことができなかったことから、日本ではグーグルへの批判も多く見られました。ところが、それから1年で事態は突然、誰もが驚くほど大きく動いたのです。

ネットに革命が起きた日

2017年の12月6日は、ネットに信頼できる医療情報を望む人にとって、歴史的な日になりました。

その日、グーグルはついに、WELQのような手法で健康・医療情報を大量生産するメディアに、大幅な制裁を下したのでした。

グーグルはその日、医療や健康に関する検索結果の改善を目的としたアップデートを実施した、と発表しました。その結果、これまで問題になっていたネットメディアの記事の多くが、検索結果の上位から姿を消したのです。この結果は劇的で、たとえば前述のヘルスケア大学は、ほとんどのキーワードで利用者の目に入る範囲外に落ちました。実は、グーグルも、ずっと指をくわえていたわけではありません。WELQ後、細かな調整をしていることが専門家らによって観測されており、夏にはすでに今回のアップデートをにおわしていました。8月25日に開催されたイベント「グーグル Dance Tokyo 2017」の質疑応答では、以下のようなコメントがあったことを、複数の関係者が証言しています。

多くの人から指摘があることはグーグルでも把握しており、(健康・医療分野の)優先度を高くしている。詳細はここでは明らかにできないが、期待していてほしい。

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