「損な選択」ばかりしてしまう人の思わぬ盲点 ノーベル賞でも話題の「行動経済学」から学ぶ

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例えばこんな話。

うり彦の長年使っていたドライヤーが壊れてしまいました。
うり彦はたまたま家に遊びにきていた姪のとん子ちゃんと一緒に駅前の安川でんきにドライヤーを買いに行きました。今朝の安川でんきのチラシで前からほしかったドライヤーがセールで5000円だったからです。
安川でんきに到着する直前で、駅の反対側のビック無線の社員がチラシを配っていました。そのチラシには、ほしいと思っていたドライヤーが4700円と300円安く掲載されていました。結局うり彦は駅の反対側のビック無線に行き4700円のドライヤーを購入しました。お得になった300円を使ってうり彦は、アイスクリーム屋さんでとん子ちゃんに300円のソフトクリームを買ってあげました。
翌日、うり彦は長年愛用してきたステレオで音楽を聴こうとスイッチを入れました。20年も使っていたのでさすがに壊れてしまいました。昨日の安川でんきのチラシを覗くと、前からほしかったZONYのコンポがセールで19万5000円と掲載されていました。昨日と同じようにとん子ちゃんにつきあってもらい買いに行きました。
すると、また安川でんきに到着する直前でビック無線の社員がチラシを配っていました。そのチラシにはZONYのコンポが19万4700円と300円安く掲載されていました。昨日と一緒にビック無線で購入するかと思われました。しかし、うり彦は安川でんきでZONYのコンポを購入しました。
とん子ちゃんは昨日と同じ300円引きなのになんで高い方をうり彦が購入するのか理解できませんでした。
―『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』より―

うり彦はコンポをビッグ無線で買えば300円安く購入できるのに、わざわざ高い方を選んで購入しています。それは一体なぜか? 『ヘンテコノミクス』を読み進めてみましょう。

おカネの価値を変えてしまう「感応度逓減性」

これを行動経済学では「感応度逓減(ていげん)性」と言います。今回のうり彦のように、私たちは全体の母数の大きさによって同じ金額を大切に扱ったり、邪険にしたりと勝手にその価値を変えてしまう場合があります。

『行動経済学まんが ヘンテコノミクス 』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

つまり、5000円の買い物をするときの300円と、19万5000円の買い物をするときの300円が違う価値になってしまうということです。

私にも思い当たる節があります。無駄な気はしているのに、射幸心にあおられて宝くじのスクラッチをやってみたり。無駄遣いしたなと思っているときに、喉がかわいているけれど定価で飲み物を買うのはもったいないから、家まで我慢しようと思ってみたり。割高でまずい居酒屋に行った翌日、購買意欲が著しく落ちたり。食欲も落ちたり。海外旅行に行くと、必要以上に多く消費してしまったり。免税ショップはうっかり寄ってしまったり。お土産を買う気分になったり。

ところでうなぎ屋で松・竹・梅のうな重をメニューに載せておくと真ん中の竹が一番売れると聞いたことはありませんか。

松(3000円)竹(2500円)梅(2000円)……。うーん、消費税を入れると3240円、2700円、2160円ですか、ゴニョゴニョ。

世の中は選択であふれていますね。

(文:佐藤 樹里)

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