蝶をかわいがる姫君の隣に住む按察使の大納言の娘。彼女は虫が大好きで、特に毛虫がたまらなく好き、と出だしからしてとんでもない。
「自然体、ありのままの自分のほうがいいじゃん」
かくおづる人をば、「けしからず、ばうぞくなり。」とて、いと眉黒にてなむ睨みたまひけるに、いとど心地惑ひける。
姫君が「みんなが花とか蝶とかかわいいと思って騒ぐじゃない? それって本当にわからない。馬鹿みたいよ。人間は誠実が一番」と言い、いろいろな種類の、見るだけで気持ちが悪くなるような虫たちを集めて、「これがどのように成長するのかな……楽しみだわ」と言いながらさまざまなかごに入れていた。
日本文学初の不思議ちゃんが登場。形にとらわれず物事の本質を追究するというのは仏教の教えに基づいている考え方であり、姫君が唱えている論理は一見理にかなっているように聞こえるが、きれいなものだけ求めるのは浅はかだとしても、虫に固執するというのもそれ以上におかしいし、周りに対する反応も尋常ではない。よく言えば個性的、悪く言えば変人。
うわさになるのではないかと恐れて親も説得しようとするが、姫君は頑なに自分の理屈をぶつけて、一切動じない。こんなことになって最も迷惑するのは、不思議ちゃんの姫君に仕えている侍女たちだ。蝶をかわいがる優雅な姫君だったらよかったが、気持ち悪い虫と遊ぶ変な人を相手にするのはつらい。



















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