『出産と育児休職はその後のキャリアに影響する?』(34歳女性) 城繁幸の非エリートキャリア相談

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<城繁幸氏の診断>

診断:『日本企業で女性が出世しない理由』

 よく「年功序列制度は平等で公平なシステムだから、みんなでこれを守ろう」なんて言っている人がいますが、年功序列制度には、結果的にフリーターや中高年求職者を締め出すことで成り立っているという負の側面があります。

 また、レールに乗ったとしても、現実には誰もが同じ扱いを受けられるというわけではありません。たとえば女性がそうですね。86年の男女雇用機会均等法の整備以降も、雇用における男女間の格差は確実に存在しています。女性の社会進出を示すGEM指数は先進国中最下位(2004年)、入り口の採用においても、総合職内定者に占める女性の割合は12%に過ぎません(2005年度)。

 なぜ、こんなに格差が生じてしまうのか。それは、年功序列制度が勤続年数を基準とする制度だからです。

 たとえば課長ポストであれば「その会社で15年以上のキャリアを積んだ人間の中から選抜する」というようなコンセプトです。さらに言えば、たいていの企業には、抜擢に際して上限も存在します。課長昇格は42歳まで、という具合ですね。

 こうなると、途中で出産や育児を伴う休職期間が発生する可能性の高い女性は、幹部候補としては著しく不利となってしまうわけです。日本企業において、女性の登用が進まない背景には、こんな事情があるのです。

 余談ですが、男性の育児休職取得率が0.5%(2005年度厚生労働省調査)と一向に伸びないのも、理由は同じです。途中でキャリアに穴を空けることが難しいため、会社に縛り付けられているわけです。個人的には、これも少子化の一つの要因だと考えています。

 では、抜本的な解決策は、どのようなものなのでしょうか。

 それは、年功賃金からの脱却、具体的には職務給へのシフトです。この点は経団連もしっかりと認識しています。

 【以下、日本経団連『今後の賃金制度における基本的な考え方』2007年より抜粋】
 
 --女性の活躍促進に向けては、出産・育児等によってキャリアの断絶が起こりやすいため、勤続年数による年功型賃金を見直す必要がある。--

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