解禁後3週間で見えてきた「就活戦線」の変調 学生が警戒するAI採用は大手の2割超が検討

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最も多いのは、インターンシップに参加した学生に対する、イベント案内だ。いわゆる通常の企業説明会に招かれるケースも少なくないが、特に最近目立つのは、インターンシップ参加者にフォーカスした限定イベントである。

期間は1日から数カ月とさまざまだが、就業体験済みの学生は、企業にとって“話の早い”学生で、通常の説明会から“まずは1合目の情報提供”につき合わせるのは、お互いに効率が悪い。そこで予備知識のある人に向けた場を別途用意している。これは、インターンシップに参加した学生にもメリットがあり、実際そのほうが学生の参加率も高くなるようだ。

もっとも、インターンシップに参加したからといって、すぐにその企業に囲い込まれるわけではない。別のインターンシップを案内されたり、定期的なメールでのフォローを受けたり、中には社員やリクルーターを紹介される学生もいるが、採用選考にチャレンジするかどうかは、学生の意志に委ねられている。

では、インターンシップを経験した学生のインターンシップ参加企業への入社意向は、どうだろうか。「入社したい」と「どちらかというと入社したい」を合わせると実に82.3%にも上る。やはり元々その企業や業界、仕事に興味があってインターンシップに応募しており、実際に職場などで業務を体験することで、「やってみたい」「これならやれるかも」という気持ちが増すのであろう。

3分の2はインターンシップと選考方法異なる

受け入れる企業側も回数を重ねる中で、よりその仕事の本質が伝わるよう、プログラムにも工夫を重ねている。ただ漫然と現場に放り込まれて、従業員の1人として作業を淡々とこなすというようなインターンシップでは人が集まらない、という現状も後押ししているのだろう。

実際に2018年卒学生のうち、インターンシップ参加企業に就職した学生は22.3%(『就職白書2018』)。インターンシップに参加した企業でないが、同業種の企業に入社する予定の学生も合わせると51.4%に達し、半数以上がインターンシップに参加した業界に就職している。

短期決戦の傾向が強い現在の就職戦線においては、複数業種を志望することが難しくなっており、予備知識のある業界への就活を優先する動きは2019年卒でも続くだろう。

一方で、3月から4月にかけては、会社説明会なども積極的に開催され、学生にとっては、幅広い業種を知る機会にあふれた時期でもある。「よく知らないから」という理由だけで選択肢から外すのはもったいない。ぜひ、インターンシップに行けなかった業界でも気になる会社があるなら、視野に入れてみてはどうだろうか。

また就職に比べると、インターンシップの受け入れ枠は、まだまだ圧倒的に少ないのも事実だ。インターンシップに落ちたからといって、その企業への就職の可能性が閉じられたわけではない。インターンシップと採用とで選考基準が異なる企業は67.3%(『就職白書2018』)にも上る。興味があるならばぜひチャレンジしてほしい。

岡崎 仁美 リクルートキャリア 就職みらい研究所所長

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おかざき ひとみ / Hitomi Okazaki

1993年(株)リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に従事。転職情報誌『B-ing関東版』副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』編集長、『リクナビ』編集長を歴任。2013年3月、就職みらい研究所を設立し所長に就任。現在、内閣官房「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」「地方創生インターンシップ推進会議」、文部科学省「インターンシップ推進方策実行ワーキンググループ」等の委員を務めている。

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