5年後、日本のメディアコンテンツはこうなる

角川歴彦×川上量生対談(2)

川上:面白いですよね。今までだと小説があって、それがアニメ化されて、それに音楽がついたわけじゃないですか。『カゲロウデイズ』は、それが逆になったケースです。まず音楽があって、その世界観を小説にして、そしてそれがアニメになるという。

角川:『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』(科学アドベンチャーゲーム「STEINS;GATE」にはじまるマルチメディアプロジェクト。テレビアニメ、劇場版アニメも公開された)というアニメが角川シネマ新宿で公開されたときも、僕は『STEINS;GATE』という題も、作家の名前も知らなかったんだけれど、行ってみると満員なの。『STEINS;GATE』を作った志倉千代丸さんは、ゲーム会社の社長で音楽も自分で作る。神様は本当にズルいなと思うのは、ひとりの人間がミュージシャンになり、作家になり、映画も作っちゃう。そういう多彩な才能を持つようになった。

こういうマルチな才能のはしりは、映画監督の岩井俊二さん(独自の表現が光る映像作家。代表作『Love Letter』『スワロウテイル』『花とアリス』など)だと思います。彼は自分で漫画を描くし、小説を書くし、音楽もやるし、本人は美男子だし。もう本当にズルいよね。天は二物以上を与えるんだなと。これだけ多彩な才能を持っている人が、閉じ込められなくなってきた。マルチな才能を発揮できるようになったというのが、今の時代のよさだと思うんだけど、どうですか。

川上:以前、梅田望夫さんと羽生善治さんとの対談で「知の高速道路」という言い方が話題になりましたけど、将棋の世界だけでなく、たぶん「知の高速道路」があちこちにあって、その高速道路の乗り方を覚えた人たち――ネットのITリテラシーの高い人たち――が、多様な才能を発揮し始めていると思います。

マルチな才能を受け止めるために必要な能力とは?

角川:デジタルネーティブから新しい世代のクリエーターが生まれてきている。ネットは全部1と0でできているでしょ。だから、音楽も小説もアニメもみんな1と0で表現されちゃう。そういう感覚を持っているんだと思う。

川上:ある程度までは行っちゃうっていうことですよね、今の世の中、個人でも簡単に情報を集められる時代ですから、ある程度までは、努力すれば行けてしまう。

角川:『STEINS;GATE』を見た後、志倉さんと食事をして、最初は言わないんだけど、だんだん打ち解けてくると、やっぱり『時をかける少女』という名前が出てきた。どちらも「タイムリープ=時空移動」がテーマの作品ですよね。

僕は原作の筒井康隆さんを思い浮かべたんだけど、彼にとっては、細田守監督のアニメ映画(2006年公開の角川映画。角川会長も製作総指揮で名を連ねている)で、志倉さんは「『STEINS;GATE』の中でいただいた部分がある」と言うわけ。文字に起こしちゃうと誤解されるかもしれないけれど、彼の発想の中で「いただいている」だけで、彼自身のセンスの中で完全に処理されている。全然、パクりじゃないんだよ。志倉さんの会社(株式会社MAGES.。「5pb.」はMAGES.のブランド)はたしかドワンゴのグループ会社でしたよね。

川上:そうですね。うちのグループの会社です。

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