5年後、日本のメディアコンテンツはこうなる 角川歴彦×川上量生対談(2)

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閉塞感を打ち破るためにはルールを変えるしかない

角川 歴彦(かどかわ・つぐひこ)
株式会社KADOKAWA取締役会長。1943年生まれ。早稲田大学第一政治経済学部卒業。内閣官房知的財産戦略本部本部員、東京大学大学院情報学環特任教授などを務める。著書に『クラウド時代と〈クール革命〉』(角川書店)がある。

角川:僕は将棋をやっていたから、ゲームの思考法というのはわかる。川上くんは「ゲームの世界ではルールを変えればいいんだ」ということをサラッと言います。社会のルールを変えればいいじゃないかというふうに、簡単に矩(のり)を超えられる。僕自身、社会のルールは変えられると思って生きてきたから、川上くんの『ルールを変える思考法』という題にビビッときたわけです。

「なんで角川さんは電子書籍でひとり突っ走っているのか」と言われるんだけれども、僕が今、電子書籍に力を入れているのも、電子書籍が出版界の古いルールを変えられるんじゃないか、と思っているからなのです。

川上:KADOKAWAの歴史は、出版業界のルールを変えてきた歴史ですよね(笑)。

角川:ずっと異端児なんです。いつ潰れてもおかしくなかった。父の時代なんて、いつも倒産間際だったから。でも、そういうのがわれわれの役割だと僕は逆に思ったのです。

つまり、講談社、小学館、集英社の3社がすでに体制として出来上がっていて、そこに僕らが体制派として入っていくのは意味がない。そこで「体制内反体制」を標榜した。外部で騒ぐのでもなく、体制内でつねに批判する者でなければならないと考えた。だから、僕はずっとルールを変えようと言い続けてきました。

ルールを変えるのはすごく難しいのです。僕は出版人生でもう何十年も経験してきたからよくわかる。でも、ようやく今になって、ルールを変えなければマズいということをみんなが思い始めた。異端児だった僕に共鳴してくれる人も増えてきました。

再販制と委託制という古い業界ルールが、講談社、小学館、集英社を頂点とするヒエラルキーをつくってきた。でも、もう傷んできちゃった。17年間もひたすら出版業界の売り上げが下がっているわけです。このままでは、ほかの出版社も、書店も、取次(流通)も、みんな生きていけない。だから、いいかげんルールを変えなければいけないということは、みんな感じ始めている。大手3社も、今は賛成してくれています。もうそこまで来ているわけですね。

制度的に煮詰まってしまっているのは、出版界だけではない。社会全体もそうです。そこで、『ルールを変える思考法』というタイトルが、僕には非常に新鮮に感じられたんだよね。

僕も、川上くんの原稿を読んで『ドワンゴ成功の秘密』とか『ニコニコ動画3000万会員の秘密』とか『思考のトレーニングとしてのゲーム』とか、いろいろ別のタイトルを考えたんです。でも、やっぱり、編集者がつけてきた『ルールを変える思考法』のほうがいいでしょう? 電子書籍の時代になっても、編集者の存在は重要なんですよ。

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