スマホを捨てれば子どもの偏差値は10上がる 「ながら勉強」が子どもに与える深刻な影響

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試験の難易度などは教科ごとに異なるので、2017年度の最新データで4教科の平均偏差値を計算してみたところ、LINE等をまったく使わない群が50.8だったのに対し、1時間未満の群は50.2、同1~2時間は47.7、同2~3時間は45.1、同3~4時間の群は43.0、そして同4時間以上は40.6となっていた。偏差値で10以上の差が出る結果となったのだ。

多少の勉強で偏差値を10上げることは至難の業だ。この結果を知って以来、私は受験生やその保護者に半分冗談、半分本気でスマホを捨てれば、偏差値10向上も夢ではない!と言っている。

「ながら勉強」の蔓延

海外で行われた高校生や大学生を対象とした調査研究でも、インスタントメッセンジャーの使用時間が長い生徒の学業成績が低い、教科書を読むときに注意散漫になりやすい、読解力が低い、など様々なネガティブな影響がたくさん報告されている。

こうした多くの論文では、勉強中にインスタントメッセンジャーを使うなど、何かをしながら同時にインスタントメッセンジャーを利用する「マルチタスキング」が問題ではないかと議論されている。特に、テレビやラジオ、パソコン、スマートフォンなど、複数のメディア機器を同時に利用する「メディア・マルチタスキング」のネガティブな影響に注目が集まっていた。

そこで我々もメディア・マルチタスキングの観点から調査結果を眺めてみると、なんと、スマホ等を所持している7割以上の中学生が、家庭で勉強中にスマホ等を操作していることが判明した。3割以上の生徒は学習中にゲームで遊んでいた(最近では、ゲームを起動した状態で放置することでポイントが貯まるといったゲームもある)。

ヒトは弱い生き物であることを再認識した。スマホ等を持ってしまったら、いけないと思っていても、勉強中にゲームで遊んでしまうのだ。そして、メディア・マルチタスキングの学力への影響はシビアであった。

ゲームに限らず、学習中に音楽を聴いても、LINE等を操作しても、成績は大きく低下していた。また操作するアプリの数が多ければ多いほど、成績が低下することも判明した。海外の研究に目をむけても、青少年のメディア・マルチタスキングに関しては、学力の他認知機能も低下する、社会性に悪影響を与える、記憶力を低下させるなどネガティブな影響を論じる論文がたくさんある。

『スマホが学力を破壊する』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

主に中学生のデータを基にスマホの影響を論じてきたが、このネガティブな影響が、全ての年代の方々にあてはまることを忘れてはいけない。明るい将来を担保するために、自制心を持ち、スマホの使用は1日1時間以内とするのが望ましいだろう。

今世紀、情報通信技術、コンピュータ技術が飛躍的に発展し、スマホを代表とする情報通信端末が広く普及したことにより、人類と社会、文明の破壊が一気に進みだしたのではないか。特にヒトの心の内なる破壊が、すでに深く静かに始まっているのではないか。私はこうした危機感を強く感じている。

破壊が非可逆的になる前に、社会全体で歯止めをかける必要があると固く信じている。

川島 隆太 東北大学加齢医学研究所 所長

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かわしま りゅうた / Ryuta Kawashima

1959年生まれ。東北大学医学部卒。同大学大学院医学研究科修了。医学博士。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学加齢医学研究所助手、同講師を経て、東北大学加齢医学研究所教授。2014年から現職。主な受賞として、2008年「情報通信月間」総務大臣表彰、2009年科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞」、2009年井上春成賞。2012年河北文化賞。査読付き英文学術論文400編以上、著書は『スマホが学力を破壊する』『さらば脳ブーム』『オンライン脳』など、300冊以上。

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